「こんな仕事、意味あるんですか」多くの人が毎日悩む「無駄な仕事・書類」の残念すぎる実態
わたしたちはいつまで金銭や時間など限りある「価値」を奪い合うのか。ベストセラー『世界は経営でできている』では、気鋭の経営学者が人生にころがる「経営の失敗」をユーモラスに語ります。 【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の大きな違い ※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。 〈人間の労力や時間のほとんどは、一応「仕事」という名前がついているだけの、何のために/誰のためにあるのかよくわからない無意味な「作業」ないし「運動」で費やされている。 たとえばエクセルを開いて、閉じて、開いて、閉じてという指先ラジオ体操で今日の貴重な一日を終えた人は日本だけでも百万人以上いるだろう。 もしかしたらこうした時間の無駄に耐えられず、「こんな仕事、意味あるんですか」という禁句を発して上司に食ってかかった人もいるかもしれない。 こうした状況において、大抵の場合、上司は「規則だ」とぶっきらぼうに返事するだけだろう。というより上司だって、役員だって、取引先だって、意味不明な仕事を会社に強制してきた規制当局だって、誰も「その仕事が何のために必要なのか」も分かっていないのだからそう返答するしかない。〉(『世界は経営でできている』より) 日本でも「ブルシット・ジョブ」(クソどうでもいい仕事)という言葉が翻訳書などを通じて知られるようになったが、仕事に関する悩みは尽きない。 誰も見ないような申請書など無駄な書類作成・提出は、いまだに多くの企業に存在するだろう。
誰にもチェックされない書類の数々
それだけではない。なんでこんなことをしているんだろう、ということは様々なシーンで登場する。 〈ほかにも事務における書類のチェックや、工場や建設をはじめとした現場仕事における検査においても、我々は大して見てもいないのに指差し呼称をしながら「ヨシ」などということもある。「大丈夫、前の人も見てるんだし」という具合だ。 残念ながら人間はみんな似たり寄ったりだ。前の人もまた「大丈夫、後ろの人も見てるんだし」となるのは当然だろう。こうして誰にもチェックされない書類や造形物が出来上がる。 逆説的だがこれらが例の「仕事ではない何か」のために作られたものなら被害はまだ少ないかもしれない。顧客がおらず欠陥に誰も気づきようがないためだ(不幸なことに造形物にもこうしたものが存在する。特に税金を投入された大規模な建物の約半分はこの類である)。しかし顧客が存在する製品・サービスでこれをやると大変なリスクとなる。〉(『世界は経営でできている』より)