渡辺恒雄氏死去、ドラフト改革や交流戦導入など球界の発展に情熱…巨人軍歴代監督と本音議論
読売巨人軍のオーナーや球団会長などを歴任した渡辺恒雄氏が19日死去し、関係者から哀悼の声が相次いだ。プロ野球を力強く牽引(けんいん)したリーダーシップは、球界の発展に懸ける並外れた情熱が支えていた。 【写真】長嶋監督から原次期監督への交代記者会見に臨む渡辺オーナー(当時)=2001年9月
1996年にオーナーになった渡辺氏は、ドラフト改革や球団の新規参入、交流戦の導入など、球界の発展に尽力。2005年に球団会長となって以降も改革に力を注いだ。
「『巨人愛』を表に出すのと同時に(球界)全体が繁栄することをいつも頭に入れていた」と、広島の松田元(はじめ)オーナーは述懐する。悲報に触れて、思い出したのは、渡辺氏が携行するボロボロになった野球協約の冊子。付箋だらけで、あちこちに赤鉛筆で線が引かれ、常に球界の将来を見据えていたという。「広島という地域球団のことも理解してくれていた」としのんだ。
オリックスと近鉄の合併交渉が発端となった04年の「球界再編」では1リーグ制導入も検討され、各球団の代表者や選手らが激論を交わした。2リーグ制維持を主張した野崎勝義・元阪神球団社長は「人脈も豊富で、すごいパワーを持った方。意見は異なったが、球界発展を願う気持ちは同じだった」と振り返った。
球界再編を機に新規参入を果たした楽天の三木谷浩史オーナーは「様々な機会に深い洞察のご助言もいただき、球界を背負う大きな責任を感じた」と感謝の談話を出した。
野球に対する情熱は現場からも敬意を集めていた。
16年から巨人の監督を3季務めた高橋由伸氏は、監督就任に際し、東京・大手町の読売新聞東京本社で2人きりで話した時間を懐かしむ。山積みの本に囲まれた渡辺氏の部屋で1時間近く、理想の指導者像などについて話し合い、参考となる書籍も薦めてもらった。
シーズン開幕前の激励会では、同じテーブルで話し込み、シーズンの展望や選手起用、球団の歴史まで熱く語り合ったという。渡辺氏は日本酒を手酌で飲みながら、高橋氏の意見に「そうか、そうか」と耳を傾けた。高橋氏は「最後はテーブルで2人きりになって話した。世間的には『怖い』『厳しい』というイメージもあったようですが、私には優しい方で、年の差のある私の本音に向き合ってくださった。心よりご冥福(めいふく)をお祈りします」と語った。