中国で相次いだ無差別襲撃事件 政府が監視を強める「数字」と、漂う“閉塞感”
■実態を伝える難しさ つきまとうメディアへの“妨害”
2024年の取材中、ことあるごとに「あなたを通報している住民がいる」という、不気味でちぐはぐな声かけがあった。 中国に浸透する愛国教育を取材中、取材先から500メートル以上離れた場所で突如、肩をポンポンとたたかれ「ちょっと話を聞きたい」と声をかけられた。また別の取材中には、利用する予定だったタクシーの運転手に電話がかかり、「日本メディアが何の取材で来ているのか教えてほしい」と何度も尋問したようだ。結果、終日にわたり、運転手の自宅前に張り込んでいたという。いずれも中国当局とみられる。 統制は、われわれ海外メディアだけではないようだ。近年、中国メディアを取り巻く環境も厳しくなる一方だという。中国国営メディアの記者として働く知人に話を聞いたところ、2020年以降、採用試験の際に、留学経験の有無を問われるケースが増えているというのだ。「西側の価値観」を排除し、思想統一を図る習近平政権にとっては一見、有利にみえる留学経験も不利に働くのだろう。こうした思想教育の徹底ぶりに、「目指すべき報道のあり方ではない」と、記者職を辞める若者も少なくないという。 言論統制が強まり続ける中国で生きていく若者を、どう見ているのか。あるインフルエンサーは、こう答えた。「統制の手段も巧妙化している。でも当局がいかなる方法で、情報・言論・SNSを監視しても、若者が情報を手にしたいという欲望は高まり続けるだけだ」 そして、こうも訴えた、「中国の現実にふたをして隠すことで、社会の隅で犠牲を払う人がいることも忘れたくない」