ファストリが売上3兆円到達で過去最高業績更新 上場30周年で初の大台
ファーストリテイリングが、企業として初めて売上収益3兆円、営業利益5000億円を突破した。グローバルでユニクロの知名度が高まったことで、顧客層が拡大。観光客の需要を取り込めたことも寄与し、2024年8月期通期(2023年9月~2024年8月)で過去最高業績を更新した。
国内ユニクロ事業は、期を通しての高気温を見越して夏物コア商品の在庫を戦略的に確保したことが奏功し、増収と大幅な増益を達成。売上収益は9322億円で、1兆円目前となった。インバウンド売り上げも好調で、下期の売り上げ全体に占める免税売上の比率は前期から倍増となる約8%まで拡大。EC売上高も前期比2.3%増となる1369億円に伸長した。 グローバル化に伴い注力している海外ユニクロ事業は、全ての地域で営業利益率15%以上を実現し、全体として大幅な増収増益を達成。グレーターチャイナでは、中国市場が天候不順の影響を受けて減益となったが、台湾市場の夏物好調などに支えられて僅かに増収増益となった。店舗のスクラップアンドビルドを加速させ、人口が多い都市に旗艦店を出店していく考えだ。 そのほか、韓国や東南アジア、インド、オーストラリア、北米、欧州でもブラトップなどのコア商品が売り上げを牽引し、大幅な増収増益を達成。決算説明会に登壇したファーストリテイリング グループの柳井正代表取締役会長兼CEOは「主だった市場でナンバーワンにならない限り、真のグローバル企業にはなり得ない。各市場で売り上げ1兆円を目指し、事業を拡大していく。今のところ手応えはある」と語った。 ジーユー事業はほぼ第3四半期当初の業績予想通りに着地し、増収と大幅な増益を記録。バレルレッグジーンズなど、グローバルのマストレンドを捉えた商品の販売が好調だったほか、インバウンド売り上げも好調で、業績を押し上げた。 前期に事業利益が黒字化し、赤字体質から脱却しつつあったグローバルブランド事業では、構造改革によって「プラステ(PLST)」「コントワー・デ・コトニエ(COMPTOIR DES COTONNERS)」両事業の店舗数が減少したこと、「セオリー(Theory)」事業が米国、中国を中心に販売苦戦し大幅な減益となったことなどが響き、減収と大幅な減益を記録。期初の業績予想を下回る結果となった。前期に閉店に伴う減損損失が発生していたことにより、営業利益は黒字化した。 これまで目標にしていた「年間売上3兆円」を初めて達成したファーストリテイリングは、2025年8月期においては売上収益で前期比9.5%増となる3兆4000億円、営業利益で同5.8%増となる5300億円と増収増益を見込む。今期は特に人材投資の強化を進める計画で、グローバルで優秀な人材の確保を進めるとともに、自分で考え決断できる経営者マインドを持った社員の育成に注力する。ベースアップに関しては一律で給料を上げることはせず、社員一人一人の働きを公正に評価し、貢献度が高い社員に対してより多くのサラリーを支払う方式を採用するという。 2024年は、ユニクロが誕生して40周年、ファーストリテイリングが上場して30周年の節目となる。柳井代表取締役会長兼CEOは、「企業として利益を追求するのは当然のことだが、社会に対する貢献が事業拡大とイコールになることが大切だと考えている。50周年、100周年と続いていく企業を目指して企業価値を高めることに集中していきたい」と話した。
◆柳井会長「シーイン、ティームーは長続きしない」
決算説明会の質疑応答でメディア関係者から「シーイン(SHEIN)」「ティームー(Temu)」といった中国のEC小売企業への認識について問われた柳井代表取締役会長兼CEO。両ブランドに対して「スピード感という意味では学ぶところもある」とした上で「あんなものは誰でもできる。倫理的に考えても、道理にもとるんじゃないか。あのようなビジネススタイルは長続きしないと考えているので、あまり意識していない」と厳しい目を向けた。