次に売れるクルマは何か? どん底の日産が復活するための道筋
SUVの販売傾向は二極化
SUVの人気は高いが、車種バリエーションが多いこともあって台数が分散し、車種ごとのランキングでは上位に上がってこないようだ。ライズの次に売れているSUVが、最も高価なランドクルーザーというのも販売傾向の二極化を感じさせる。つまり残価設定ローンを利用したり、経済的に余裕があったりするユーザーはランクルを好んでいる。それは相変わらずクルマをステータスとし、ヒエラルキーを構築したいと考えているのかもしれない。 一方、ヤリスクロスやカローラクロス、クラウンスポーツなどの正確な販売台数は不明だが、それなりの数が売れているのは確かだ。これらを含めると、50位中23台がSUVである。SUVライクなグレードのあるスバルのレヴォーグや、三菱のデリカD:5などSUVライクなミニバンも含めると半分はSUVと言ってもいい。 ちなみに日産は50位まで広げてもエクストレイルとキックスが入っているだけで、わずか4車種しか人気のある車種がないことが分かる。 日産は実質的にノートとセレナという2枚看板だけで勝負している状況であるため、この2台がランキングに入っているのは当然だが、トヨタとホンダ以外で20位以内に入っているのはこの日産2台とスズキのソリオだけといった状況なのだ。トヨタ以外は、ホンダしか善戦できていない状況であることがよく分かる。 軽自動車の比率が増えている中、普通車だけで比べても分からない、という意見もありそうだが、軽自動車は独自のカテゴリーであり、普通車と比べることはそれこそ意味がない。
日産の何が問題なのか。今後は?
日産の何がいけなかったのかというと、技術力や開発リソースを一部の車種に絞り込みすぎたことも大きな要因として挙げられる。EVや独自の電動パワートレイン「e-POWER」を幅広い車種に展開せず、マーチやエルグランドなどをほったらかしにしてしまったツケが回ってきている。 キューブキュービックなどのライトミニバン的なモデルを廃止して、セレナに集中してしまったのも問題だ。軽自動車EVのサクラとノート、セレナしか売るクルマがなく、同じくe-POWERのエクストレイルとキックスがSUVとして何とか台数を稼いでいる。 トヨタ、ホンダに対抗できないので車種を絞り込んだのであれば、販売規模も絞り込まなくてはならない。売れ筋モデルが少ないのに工場の生産能力や販売目標を以前のまま維持しようとしてきたことが、収益の悪化を招いた原因の一つだろう。 もっとも、日本の自動車メーカーのほとんどは、国内販売で収益を稼いでいない状況だ。北米や新興国、欧州市場でほとんどの利益を上げている。日産の業績が悪化したのも北米を中心に稼いできた市場で販売不振に陥ったからだが、これも市場のニーズを読み切れていないからに過ぎない。 売れないクルマを多数ラインアップするのは損失を増やすだけだ。しかし日産は、企業規模に比してラインアップが乏しく、特定ユーザーにしか響かないクルマをつくり続けてきた。ここから挽回するには、相当なリストラが必要だ。人員整理ではなく、販売車種の再構築こそ、日産が再生するために必要なことだろう。 自動車産業は100年に1度の変革を迎えているといわれるが、それだけでなく、変革のスピードも段違いに速い。各メーカーが全固体電池や自動運転など、競争分野での開発ぶりをアピールしているのも、先進性を印象付けたいからだ。日産に足りないのは判断力とスピード感ではないだろうか。