パリオリンピック男子バスケ フランスの専門誌編集長がホーバスジャパンを総括「戦う術をもっと学んでいく必要がある」
パリオリンピックで「決勝ラウンド進出」を掲げて臨んだ男子日本代表は、3連敗という失意の結果で戦いを終えた。 【写真】「パスの魔術師」町田瑠唯 in 女子バスケ日本代表合宿フォトギャラリー それはまだ世界のトップクラスと差があることを露呈したものではあったが、同じ3連敗であっても3年前の東京オリンピックより強豪国相手と伍してやれる時間は増え、着実に成長している姿を見せることもできた。 とりわけ、フランス戦では延長の末に敗れたものの、勝利に肉薄したことは、日本以外のファンやメディアにも衝撃を与えるものだった。 こうした今回の戦いぶりは、海外メディアの目にはどのように映ったのだろうか。フランスの月刊バスケットボール専門誌『BASKET』の編集長ヤン・キャスビル氏に話を聞いた。 ※ ※ ※ ※ ※ ── キャスビルさんはホーバスジャパンの予選ラウンド3試合を現地で取材して、日本のバスケットボールスタイルについてどういった印象を受けましたか? 「日本はリール(予選ラウンドの開催地)で私の好きなチームのひとつになりました。コミュニケーションを積極的に取り合う姿勢が気に入りましたし、彼らのエネルギー・熱量は見ている人たちにも伝わってきます。ゲームに対するアプローチが本当にいいと思いました。 日本はサイズやペイント内の強さの足らなさなど、自分たちの弱みをよく理解していて、それを隠すよりも自分たちの強みにフォーカスしていました。決して受け身になることもなく、ディフェンスではゾーンを使ったり、オフェンスでも自分たちの強みで勝負しています。私はその姿勢に、とても好感を持ちました。トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)には脱帽です。 彼が女子日本代表HCだった時、このスタイルですばらしい仕事をしました。そして今、男子日本代表HCでも、彼のスタイルはモダンでエネルギーにあふれていて、見ていて本当に楽しい」
【八村塁の能力を活かしきれなかった理由】 ── 日本の中心である八村塁(SF/ロサンゼルス・レイカーズ)や渡邊雄太(SF/千葉ジェッツ)、河村勇輝(PG/横浜ビー・コルセアーズ)らのプレーについて、どう見ましたか? ※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。 「八村塁はとてもいい選手です。ただ、ヤニス・アデトクンボ(PF/ミルウォーキー・バックス/ギリシャ代表)もそうですが、八村のようなフィジカルで強い肉体を持った選手は、FIBAの試合よりもNBAのほうがより効果的なプレーができる。FIBAの試合はコートが狭く、より組織的なゲームでディフェンスも集団で行なわれるからです。バスケットに近づくためには、ボールをより長く保持しなければなりません。 それに対して、日本のスタイルはボールを動かすことなので、誰かが5秒もボールを持ち続けることは効果的ではない。もちろん、大きな体でバスケットに向かってドライブできる八村は、パワー不足のチームにとって重要な選手なので、相手にとって脅威でした。 渡邊雄太も非常にいい選手です。彼のシュート力は、相手のディフェンスを広げられるものでした。彼はドライブもでき、最初の1歩目からスピードに乗れます。ただ、私としては彼にシューターだけでなく、より頻繁にペイントをアタックするスラッシャーにもなってほしい。 そして、河村です。はっきり言って今回、彼は私の大好きな選手のリストに新たに加わりました。正直に言うと、彼のことはオリンピックまでほとんど知りませんでした。ヨーロッパにいると、アメリカやヨーロッパでプレーしている日本人のことはわかるのですが、日本国内の選手たちを知る機会はありません。 3年前の東京オリンピックで、我々は町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)という選手を発見しました。町田は信じられないほどのポイントガードでしたよね。そして今年のリールでは、河村がそんな存在でした」