被災者による奥能登の珠洲「ガイドツアー」その意図は…現地で取材 参加者から「思ったより復興進んでいない」「行っていいのか悩んでた」の声
小中学校・キャンプ場、今は…
次は先導してもらいながら自身の車で、宝立小中学校(小中一貫校)に。発災直後は約800人もの人が避難、7月27日時点で約40人の人が生活しているそうです。野外の炊き出し場、自衛隊風呂などを見学しながら、避難所で炊き出しのリーダーをされていた宮口さんから、地元の大工さんが自転車小屋だった炊き出し場に雪が吹き込んでこないように建材やビニールシートで改造してくれたことや、行政と連携して食事を用意するのに苦労したことなどを語ってくれました。 宝立小中学校から車での移動となり、蛸島町鉢ケ崎へ。鉢ヶ崎海岸に近い「鉢ヶ崎オートキャンプ場」は、地震後はボランティアが協力金500円で一泊できる「ボラキャンすず」に。アウトドアブランド「モンベル」が寄贈したテントがいくつも設置されていました。また、「ジャンボリー会場跡地」は珠洲市の災害ゴミ集積場となっており、広々とした敷地を復旧のために活用していることがうかがえました。 最後に訪れたのが飯田港。宝立町鵜飼同じく津波の被害、そして沈下の被害も大きかったところです。壁面にイルカが描かれた建物「さいはてのキャバレー」は、奥能登国際芸術祭でのイベント会場や貸しスペースとして利用されていましたが、津波での破損が大きく、海側のガラスはすべて割れていました。去年5月の地震から沈下が始まっており、解体が決まっています。 ツアーではまち歩きができ、障害物や段差がある場所でも中に入って間近に見られるのが魅力だと感じました。また、こういった場所をツアー客が撮影していいものかと悩みましたが、「家の中や表札、住所など個人が特定されないように撮影するのはかまわないです。むしろ現状を撮影し公開してくれた方が復興につながるのではと思っています」と宮口さん。個人が特定できるものを撮影しそうになった場合は、その場で声掛けをするそうです。 国内外でさまざまな事件が起こり、近頃は能登半島地震についてのニュースは少なくなりつつあります。また、SNSでは被災地について正反対のことを語る投稿が流れ、何が本当かわからないという人もいるのではないでしょうか。実際に珠洲のまちを自分の目で見て、被災者から直接話を聞ける、テレビや新聞、インターネットのその先の世界に触れられる「ツアー」であることには間違いありません。 ◇ ◇ 今回は天気が良く、町を歩く時間を多くとってもらいましたが、雨の場合や小さな子ども連れで、長時間歩くのが難しい場合は、道の駅でお土産を買ったり、特産の塩づくり工場を見学したりと屋内を中心のコースにするなど臨機応変な対応も可能とのことです。 「珠洲までは遠くて来るまで大変なので、美味しいものを食べたり、気に入ったお土産を買ったり、何か楽しいことがあれば」と宮口さん。 ツアーはガイドが車で先導して案内、または、現地までチャーターバスで来た場合はガイドが同乗して案内する形式に(旅行業ではないので運送や宿泊など旅行サービスの手配はなし)、1人でも参加は可能。1人の場合は5000円、5人以上で1人3000円と、人数によって料金が変動(学割あり)。参加者1人につき300円が、お祭り復興資金として寄付されます。 (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)
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