Amazon、新型ドローンの認可取得、米西部で配達開始
米アマゾン・ドット・コムはこのほど、より小型で静かな新型配送ドローン「MK30」の飛行認可を米連邦航空局(FAA)から受けたと明らかにした。既に一部の物流施設に導入しており、一層の高速配送を目指すとしている。 ■ アリゾナ州フェニックスで運用開始 FAAから、オペレーターの目視範囲を超えて飛行する「目視外飛行」(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)の許可を得た。これにより、航続距離が伸び、より多くの顧客がサービスを利用できるようになる。 これに先立つ24年5月、アマゾンはFAAから目視外飛行の許可を受けていた。だがそれは同社が飛行試験を行っている米南部テキサス州カレッジステーションに限定されていた。今回の認可を受け、同社はカレッジステーションのほか、米西部アリゾナ州フェニックス都市圏ウエストバレー地域で新型MK30を使った配送を始めた。 ■ ドローン拠点、即日配達施設に隣接 アリゾナ州フェニックス西部の都市トルソンにある物流施設「セイムデー・デリバリー・サイト(即日配達拠点)」近くに住む顧客が、重さ5ポンド(2.3キログラム)以下の対象商品を購入すると、1時間以内にドローンによる配送を受けられる。雨天でも配達可能だという。
アマゾンはセイムデー・デリバリー・サイトのネットワークを拡大し、配達の迅速化を図っている。この施設は主に大都市近郊にあり、1施設当たりの大きさは大型フルフィルメントセンター(発送センター)の数分の1程度である。アマゾンの電子商取引(EC)サイトで人気のある約10万点の商品を常時置き、一部を数時間で配達している。同社はこの施設とドローン拠点を隣接させることで、1時間以内の配達を実現した。 ■ 新開発の障害物検知・回避システム アマゾンは13年からドローンを使った配送システム「Prime Air(プライムエアー)」を研究・開発してきた。19年には30分以内に配達できるよう設計した自律飛行型ドローンを披露した。これは大人の身長ほどの大きさで、垂直離陸した後、一定の高度に達すると、回転翼をほぼ垂直に傾けて水平飛行する。安全のために回転翼を覆っているシュラウド(カバー)は水平飛行時に固定翼として機能する。こうしたメカニズムであるため電力効率が高いと、アマゾンは説明していた。 しかし、その後試験中に何度か衝突・墜落事故を経験するなど困難な状況に直面した。それ以降、試作機の設計・改良を重ね、障害物検知・回避システムを開発した。同システムは水平方向にある飛行機のような移動物体を認識できるほか、煙突のような静止物体も検知する。障害物を特定すると、自動で進路変更し安全に回避する。「ドローンが降下して荷物を顧客宅の裏庭に下ろす際は、周囲に人や動物、障害物がないことも確認する」(アマゾン) これにより、24年5月にテキサス州カレッジステーションで目視外飛行の認可を受けた。カレッジステーションではオンライン薬局「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」と連携し、処方箋薬のドローン配達も行っている。 今回、アリゾナ州フェニックスでのドローン配送が実現した。アマゾンによれば、日用品や美容用品、オフィス用品、テクノロジー用品など、5万種類を超える商品が高速配達できるようになった。同社は今後も対象地域を拡大し、全米展開を目指す考えだ。30年までに年間5億個の荷物をドローンで運ぶとしている。
小久保 重信