見た目は焼きザケ?…たんぱく質アップのゲル化剤でつくるムース食
伊藤清世の「あれ?コレ 介護食 plus」
1人分だけの介護食を作るって面倒、大変そう、というイメージはありませんか? かむ、のみ込む力が低下した方にも喜ばれ、ちょっとした工夫で家族みんなが食べられるおいしい食事を、在宅訪問管理栄養士で介護食アドバイザーの伊藤清世さんが提案します。 【写真5枚】冷凍ブロッコリーと魚肉ソーセージのバターソテーの作り方
今回も少しだけ「本格的」な介護食のご紹介です。かむ力、飲み込む力の弱ってきた方のために、食材をミキサーですりつぶし、ゲル化剤を加えてムース食にする方法を、前回、前々回と紹介してきました。 しかし、ムース食にも弱点があります。 「ムース食は見た目がきれいだけど、お湯が入る分、摂取量当たりの栄養価が下がってしまう」「少ししか食べられない方にムース食でエネルギーをとってもらうためにはどうしたらよいか」などの相談を受けることは少なくありません。 確かに、ムース食を作る際に食材と同量の水分を加えるため量が増えてしまいます。飲み込む力が低下するなど、食べられる量が少ない場合、摂取できる栄養も減ってしまいます。 こんな場合、食事の量を減らして、おやつにエネルギーの高いアイスやプリンを食べてもらう方法や、食事にマヨネーズソースやオイル入りのソースを使用するなどの方法を提案します。
今回、使用したのは「宮源のソイムースi」という介護食用ゲル化剤です。通販などで購入できます。 豆乳ベースなので、たんぱく質が含まれます。このレシピで使用する「ソイムースi」は10g。これでたんぱく質約3.4g、エネルギー約36kcalを摂取できます。 食材の味を邪魔することもほとんどありません。料理に豆乳を使用する感覚でしょうか。常温で固まるため様々な温度で食事を楽しむことができます。 自分も家族も、嚥下(えんげ)障害とは関係ない、と思っている方も多いと思います。 私が関わった高齢者のご家族も「入院前は私たちと同じ食事を食べていたのに」「昨日までは普通に歩いていたのに、寝たきりで食べられなくなるなんて」とおっしゃることがあります。 若くても嚥下障害を伴う病気になることもあります。「まさか自分が難病になるなんて。食事をこれからどうしていけばいいんだろう」と悩む方もいらっしゃいます。 その時に備えておく、といっても難しいと思います。ただ、普通の食事が食べられなくなったとしても、おいしく栄養をとる方法がたくさんあることをぜひ皆さんの知識として覚えていただければ幸いです。 今回は焼きザケをムース食にして、切り身のように成形し、皮もつけました。少しでも、見た目を楽しんでいただくための工夫です。皮があるだけで、「サケだ」という気持ちになるのです。皮は食べなくてもかまいません。