【コラム】残りの任期に尹大統領がやるべきこと
最近のように与野党が同時にさまようケースは珍しい。一方がつまずけば別の一方が勢いづいたが、今回は違う。与党では尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と韓東勲(ハン・ドンフン)国民の力代表の葛藤が深まっている。些細なことが大きくなった。親尹・親韓の党員掲示板の衝突を見ると、今がそのような時なのかと思う。関係の復元は難しくなった。尹大統領の「とにかく謝罪」から1カ月が経過した。変わった点はない。金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人の問題と人事問題をどう解決するべきか、言葉ばかりが多い。金夫人が大統領の海外訪問に同行するかどうかが国民の関心事というのは悲しいコメディだ。韓代表は大小の口論にとらわれている。負けるが勝ちという点を心に刻むべきだろう。2人とも政治を初めてするため、人を寛容に抱き込む力が弱い。保守としては残念なことだ。 民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は裁判だけで5件にのぼる。大法院(最高裁)までの15件の判決のうち、ようやく1審の2件が終わった。見守る国民は疲れる。法律専門家のようになってしまう。民主党議員らは裁判所の前の両側に並び、李代表の視野に入ろうとする。国民の僕でなく李代表の僕のようだ。その姿をさらに13回も見なければいけない。判決に一喜一憂する李代表の姿も13回見なければいけない。もちろんそれ以前にも不利になれば判決に従わず路上に出ていく。厳酷な時期に命を投げて広野に立った進歩の堂々たる態度は見られない。 与野党の国会議員らは国の心配より自分の今後に没頭している。ほとんど「生計型」だ。還暦を控えて議員バッジをつけたある初当選議員はこのように語った。「再選まですれば70歳近いが、老後対策にこれほどのものはない」。この程度になれば何を期待できるだろうか。政治家の良心と所信、使命感は捨てて久しい。ただ、良い列にうまく並んで1、2回さらにやろうという考えばかりだ。 このような保守・進歩が別のところに気をとられている間、国内外は尋常でない。トランプ次期大統領は韓国を富裕国だとして圧力を加えるが、深刻に考えていないようだ。経済は躍動性を失い、病にかかった。韓国銀行(韓銀)は来年から1%台の低成長を予告した。危機説が出ている。企業は事業部門と資産を売って現金を確保している。10大グループのうち問題がないところはわずかしかない。中堅・中小企業は言うまでもない。自営業者のうち融資が3件を超える多重債務者は178万人にのぼる。延滞だけで13兆ウォン(約1兆4000億円)だ。株価は下落している。グローバルスタンダードを無視し、投資家が望むこと(金融投資所得税廃止、空売り禁止)をすべてした。企業の内在価値が悪化すればいかなる対策も効果を期待できない。この渦中に政府経済チームは「経済が良い」と厚かましくも自画自賛する。 地方選挙(2026年6月)、大統領選挙(2027年3月)を考えると、尹大統領が実際に何かができる時間は2026年初めまでの1年余りだ。尹大統領は局面の転換を狙って戦線を広げるようだ。「労働・教育・年金・医療など4大改革は絶体絶命の課題」として成果を出すよう促した。少子化対策を含めて「4+1改革」という声も出ている。最近は二極化の解消を加えた。重い課題を一度にすると言うので信頼できない。今まで何をしてきたのか。最も大きな問題は支持率20%の大統領が何を言っても説得力がない点だ。国民の支持がなければ改革は一歩も踏み出せない。少数与党であるためなおさらだ。 李明博(イ・ミョンバク)政権をベンチマーキングしたのなら見当違いだ。執権初年度の2008年のBSE(牛海綿状脳症)事態と江南富裕層政権のイメージで李大統領の支持率は10%台に落ちた。2年目から国政基調を親庶民中道実用に変えた。同伴成長と共生を話題にした。そのおかげで支持率を50%台まで引き上げた。当時はBSEという偽ニュースにやられた。それを正せばよかった。任期の序盤であり反騰する力もあった。今は違う。偽ニュースでなく大統領周辺が自ら招いた混乱だ。後半期は推進動力も落ちる。公務員はすでに不動の態勢に入った。 手に握ることができる1、2件だけが成功しても幸いだ。歴代大統領の業績も1、2件程度しか記憶に残らない。盧泰愚(ノ・テウ)は北方外交、金泳三(キム・ヨンサム)は金融実名制と一心会清算、金大中(キム・デジュン)は通貨危機克服、盧武鉉(ノ・ムヒョン)は韓米FTA、李明博は金融危機克服、朴槿恵(パク・クネ)は公務員年金改革だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は思い浮かぶ業績がない。海外でも民営化に専念したサッチャー英首相、小さな政府を推進したレーガン米大統領が成功した指導者として記憶される。カーター米大統領はあらゆるものをカバンに入れて熱心に動いたが、何をしたのか分からないという酷評を受けた。 少子化と二極化の解消は急いでできることではない。労働・教育・年金・金融・不動産など社会全般のシステムが好循環に入ってこそ解決する。医療は改革課題というより医学部2000人増員をどう収拾するかがもう一つのイシューだ。年金で「より多く出して少なく受ける」という合意を引き出し、副作用が続出している週52時間制を改める程度が尹大統領ができる最善ではないだろうか。選択と集中が必要な時だ。 コ・ヒョンゴン/編集者