「教頭先生に『お母さん、家で何をさせているんですか』と言われたことも…」ダウン症のアマチュア落語家・村上有香「仕事は100歳まで続けたい」と言えるまで
小学5年生のころ、有香が「ダウン症って何?」と聞いてきました。自分が取り上げられたニュースをテレビを見て「自分はダウン症なんだ」と知ったようです。「お父さんには内緒にしてね。ふたりだけの秘密にしてね」と有香が言うので、「お父さんは知っていると思うよ」と伝えました(笑)。お友達と同じようにできないことを有香が嘆くときは、一緒に悲しむことしかできませんでした。代わってあげられないのでね。でも、「何ができなくても、お父さんとお母さんは有香ちゃんのことが大好きだよ」ということは伝えてきたよね。
有香さん:うん! 喜美子さん:最終的に吹っ切れたきっかけは『アナと雪の女王』の主題歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」でした。歌いまくって、気が晴れたみたいですね。
■「私は100歳まで仕事をがんばりたい」と言ったら ── 学校を卒業されてからは、どのような生活をされているのですか。 喜美子さん:中等部から支援学校に通って、高等部を卒業しました。今は、デイサービス(高齢者)で仕事をしながら、神戸大学の「学ぶ楽しみ発見プログラム(KUPI)」に参加して勉強をしています。知的障がいのある学生が、一般の大学生と一緒に学んだり講義を受けたりする取り組みです。10月から2月までの週3回で、4年受講したら卒業する仕組みになっています。
有香さん:週4日、デイサービスで仕事をしています。仕事は楽しいです。職員のポロシャツとズボンを乾燥機に入れ、乾いたら取り出して全部たたむんです。「村上さんが休みの日は忙しいから、毎日来てほしい」と言われます。大学では3回生です。曜日によって、音楽の授業とか哲学の授業とか、いろいろ学んでいます。 喜美子さん:今は大学で勉強を楽しんでいますね。参加した一般大学生も「KUPI生から学ぶことが多かった」と言ってくださいました。お互いに学ぶところがあるみたいですね。
── 落語もされていますし、お忙しいですね。 有香さん:休みの日は、料理を習っています。ピアノも習っています。 喜美子さん:先生の生演奏で歌を歌っているので、20年続けていますけれど、ピアノ曲は全然弾けないんです(笑)。小学校3年生までは、ピアノで発表会にも出ていたのですが、私が限界で(笑)。4年生からは発表会は辞退して、歌う専門になりました。ピアノ演奏には向かなかったのですが、生伴奏で歌うのは楽しくて、通い続けています。先生は、有香が頼んだ曲を演奏してくださいます。ピアノのレッスンが大好きで、すぐ近くなのに10分前には出かけようとするんですよ。