【日本選手権・10000m】伏兵・葛西が日本一に 東農大・前田がU20アジア新で3位と大健闘
第108回日本選手権・10000mが3日、エコパスタジアムで開催されました。今夏のパリオリンピックの日本代表選考を兼ねた一戦で、男子は社会人2年目の葛西潤選手(旭化成/創価大学OB)が初優勝を果たしました。 【画像】都道府県対抗男子駅伝の区間賞一覧 3区は葛西潤選手 「たぶん優勝候補には全く上がってなかったんですけど、個人的には良い練習ができていたので密かに狙っていました」 葛西選手はこう話しますが、学生時代には2023年の第99回箱根駅伝で7区区間賞を獲得している実力者です。緑色の電子ペーサー(グラウンド内に設置されたLEDライトが発光してペースを示す。今回の設定タイムは27分22秒00でした)が刻む先頭集団でレースを進めると、残り1000m、残り1周の二段階スパートを炸裂させて日本一に輝きました。五輪参加標準記録(27分00秒00)には届かず五輪内定とはならなかったものの、日本歴代4位となる27分17秒46の好記録でした。 葛西選手は現状、ワールドランキングではパリ五輪出場圏外ですが、今月18日にロンドンで再び10000mのレースに出場し、パリ五輪出場を狙いにいきます。「本当に一か八かになる。正直なところ、昨年まではパリは全然見据えていなかったし、それが見える位置まで来られるとも思っていなかった。しんどいが、せっかくなのでチャレンジしたい」と意気込みを口にしていました。
大学生ランナーの奮闘も光りました。大きな衝撃を与えたのは、東京農業大学2年の前田和摩選手でした。今回の日本選手権は出場枠が30人と決まっており、当初前田選手は出場圏外でしたが、欠場者が出たために繰り上がりで出場権を得ました。 「自分の力がどこまで通用するのか、とにかくがむしゃらに付いていくことだけを考えて走りました」こう話す通り、前田選手はチャレンジャーとしてこの大会に臨み、積極的に上位でレースを進めました。 5000mを自己記録よりも速い13分43秒ぐらいで3番手で通過すると、ラスト1000mの葛西選手のペースアップにもただ一人食らいつきました。「最後は力を振り絞って、最後まで諦めずに走ったんですが、葛西さん、太田さんのほうが1つ、2つ上でした」と振り返るように、最後は葛西選手に突き放され、ホースムトレートでは太田智樹選手(トヨタ自動車/早稲田大学OB)にも抜かれましたが、3位に入る大健闘を見せました。 衝撃的だったのはそのフィニッシュタイムです。「正直ちょっとゴールしてびっくりした自分もいる」と、前田選手自身も驚いたタイムは日本歴代5位となる27分21秒52で、田澤廉選手(トヨタ自動車/駒澤大学)が2021年にマークした日本選手学生最高、佐藤圭汰選手(駒澤大学3年)が2023年に打ち立てたU20アジア記録・日本記録をも塗り替えました。 大学1年時から度々周囲を驚かせる好走を見せてきた前田選手は、今年1月の第100回箱根駅伝は腰に痛みがあった影響で7区13位と本来の力を発揮できませんでした。そのケガが癒えてからは、3月の順天堂大学競技会で3000mでU20日本歴代4位となる7分57秒25、4月の金栗記念では5000mで13分46秒71の自己新記録をマークしており、調子を取り戻していました。 一躍日本のトップランナーとしての力を示した前田選手ですが、世界への意識を問われるとこんなことを話していました。「もちろん在学中も世界の舞台で戦いたいと思っていますが、監督、コーチ、チームのみんなも、自分のことを尊重してくださり、このチームがあって今の自分があると思っています。今季の前半は全日本予選(全日本大学駅伝関東地区選考会)、後半は箱根駅伝予選と本選に焦点を当ててやっていこうと思っています」大学2年目のシーズン、駅伝でも国内トップランナーの走りを見せてくれるでしょう。 また、駒澤大学の主将を務める篠原倖太朗選手(4年)も、日本選手学生歴代5位となる27分35秒05の好タイムで6位に入りました。しかしながら、篠原選手は「調子はそんなに悪くなかったですし、レース中も結構動いていたので、それで学生に負けたのは悔しいですね」と悔しさを口にしていました。 序盤、積極的にレースを進めていた山口智規選手(早稲田大学3年)は「2000mぐらいで乳酸が抜けてくれないかなと思った」と言い、3000m過ぎに先頭集団から後退し21位でした。