高島屋 村田善郎社長 百貨店から進化へ【トップに聞く 2024】
“まちづくりの高島屋”が目指す先
―金融事業にも力を入れていますね。2022年には金融サービスアプリ「高島屋ネオバンク(※)」の提供を開始しました。進捗はいかがでしょうか。 若い世代の獲得を目指して「高島屋ネオバンク」に積み立てサービス「スゴ積み」を搭載しました。利用者の平均年齢は47歳とほぼ狙い通り。タカシマヤ友の会のカード会員の平均年齢は64歳なので、成果を感じています。継続率も計画通りです。タカシマヤ友の会の会員は“高島屋ファン”の方が多いですが、高島屋ネオバンクの方は時計などの高額品目的で積み立てている新規の方が多い印象です。株主優待と組み合わせて使うことで、よりお得にお買物が出来ますからね。このサービスを通じて高島屋に対するロイヤリティが高まっていろいろなお買い物を楽しんでいただけたら嬉しいです。 ※高島屋ネオバンク:来店せずスマートフォンひとつで口座開設から取引まで完結できるネオバンクの基本機能に、高島屋での買い物時に使える積み立てサービス「スゴ積み」の機能を搭載。「スゴ積み」では毎月の積立額は5000~10万円の5コースから選択可能で、満期積立額に1ヶ月分のボーナスを加算した総額を高島屋各店やオンラインストアで利用できる。 ―金融事業での取り組みは、将来的にまちづくりにも発展させていくのでしょうか。 2020年からお客様の資産形成や資産承継などの相談を承ったり、金融商品の販売代理・仲介を行う「ファイナンシャルカウンター」をオープンしました。百貨店の品揃えのひとつとして金融を扱うことで、百貨店だけでなく、街全体の魅力向上にもつながっていくものと考えています。 ―従来の百貨店の形から変革を遂げている高島屋ですが、働き方でも積極的に変化を起こしていますね。休業日を新たに設置したことも話題を集めました。 私が日本百貨店協会長になった2020年、ちょうどコロナの真っ最中にアパレルや食品の業界団体から、長時間労働などの業界特有の問題から人材が定着しないということもあり、百貨店として店休日を設けてほしい、あるいはシフト制を廃止してほしいと申し入れがあったんです。そこで日本百貨店協会として、できるだけ営業時間を短縮する、可能な限り店休日を設定するといった、働き方のガイドラインを作りました。 自分だけ休んでいてもお店が開いていると思うと、本当の意味での休息は取れない。店頭の8割が取引先の方々ですから、皆さん一緒に休めるというのはサービスレベルも上がりますし、一体感も生まれるので、とても大きな意味を持つことなんじゃないかと思います。 海外ブランドになると店舗ごとで営業時間が異なりますからね。一度、あるブランドさんのバックヤードを見せていただいたことがあるのですが、従業員への配慮がなされた素晴らしい休憩室でした。ワークライフバランスをきちんと実現できない会社の店舗には出店できない、なんていう判断につながってしまうケースもあります。我々も変革していかないと販売員も生き生きできないし、人材も集まらないですからね。そういう意味でも、店休日の設定はとても意義のある取り組みだと思います。 ―「今取り組むべきこと」とは? 販売員の皆さんが働きやすくなるよう、バックヤードの業務改善は一昨年ごろから継続して取り組んでいます。商品やサービスを提供してくださるのは現場の皆さんですから、社員食堂で美味しいものを食べていただきたいし、円滑なコミュニケーションも取っていただきたい。そのために取引先から来ていただいてる方たちの満足度を定点観測するようにしていて、課題を一つずつ改善しながらより良い環境づくりを目指しています。これは引き続き注力していこうと考えています。 ―2024年も好調な業績を維持するための鍵は? この2~3年で取り組んできた構造改革を継続させていくことは大前提ですね。経費を絞りながらトップラインを上げていく。インバウンドはおおむね順調に進んでいくであろうと見ている一方、国内の顧客様が例えばアウトバウンドで国外に出てしまうというリスクは考えられるので、そういった人たちをいかに個別に繋ぎ止めるかが課題です。外商はもちろん、若い世代の方々を中心とした新規のお客様を増やしていきたいですね。 ―2031年には創業200周年を迎えます。「2031年の高島屋」はどんな姿になっていると思いますか?
昨年から「2031年の会社がどうあるべきか」についての議論を重ね、高島屋グループのめざす姿である「グランドデザイン」の作成に着手しています。お客様、株主、地域社会など、そういったステークホルダーが高島屋という1つのプラットホームの中でいろんなことが実現できるような存在を目指そうという話をしています。 (聞き手:伊藤真帆)