高島屋 村田善郎社長 百貨店から進化へ【トップに聞く 2024】
人口減少で都心に集中していることもあり、たしかに楽観視できる状況ではありません。弊社も今年で岐阜店の営業を終了します。 ただ、“救い”としてはインバウンドの拡大があると思います。日本人も知らないところへ行って民泊したりしているし、そういう人たちの情報発信の拠点は今後地方になっていくのではないかと。結局、百貨店ってインフラなんですよね。共通するのは、防災やコミュニティの拠点など「地元における装置産業」としての役割を担っている。それをどううまく活用していくかですよね。あとは、地方店同士の商品交流も一部店舗では行っていますし、各店舗で工夫は必要だと思います。 ―百貨店と専門店の融合は今後も推進していくのでしょうか。 大型店の専門店導入はほぼ完了しつつあるんですよ。海外でも、ベトナムのショッピングセンター「サイゴンセンター」の核テナントとしてホーチミン高島屋が入っていたりと展開を広げてきて、ある一定の目処はついたと思います。 ―百貨店業態にはこだわらず、進化していく。 百貨店を諦めたわけではありません。立川高島屋S.C.のように完全に業態転換をした店舗もありますが、立川エリア全体を見たときに、地域の商業施設と共存していくという発想で、まちづくりにとって一番最適な選択を選んだということです。 ―競合店と戦うのではなく、共存なのですね。 柏も西口に高島屋があり、東口には別の百貨店がありました。その百貨店は閉店しましたが、その売上がそのままプラスになるかというと、決してそんなことはない。むしろ街全体の集客力が落ちてしまうので、逆に厳しくなるんです。 ―専門店との融合で、高島屋の屋号に格安スーパーの「オーケー」が出店したのも意外性がありましたが、ブランディングへの懸念は? ほとんどないですね。百貨店のデパ地下とオーケーさんの品揃えは全然違いますから。オーケーさんは今、立川高島屋S.C.に入っていただいており、4月23日には柏ステーションモールにオープンします。出店前に地元でも調査を実施しまして、ウェルカムな声を非常に多くいただきました。営業時間も長いので、手軽に食材を買いたいお客様のニーズに応えられます。地域のお客様の声に応えながら魅力的な商業施設をつくりあげていくという点を重視しています。 ―過去には、ユニクロを導入していますが、当初、社内から抵抗の声はなかったのでしょうか。 むしろ導入すべきという声のほうが多かったですね。実際にご出店いただいてすごく良かった。「ニトリ(NITORI)」さんも同様です。これらは商業開発を手掛けるグループ子会社 東神開発の誘致力と百貨店という核があって初めてご出店いただける。テナントさん側のモチベーションにもなっているんですよね。 一例として、千葉の流山おおたかの森S・Cの開発の際は、立地環境もあって有力テナントを誘致できるか懸念していたのですが、デパ地下を切り出して「タカシマヤフードメゾン」を出した結果、有力な食品スーパーや映画館にもご出店いただき、結果として魅力ある施設が出来上がりました。高島屋の屋号があって初めて専門店も生きてくる。それが我々の強みです。