韓国で旅客機が滑走路外れ炎上 179人死亡、2人救助
韓国南西部・全羅南道の務安(ムアン)空港で29日午前9時すぎ、済州(チェジュ)航空の旅客機が着陸時に胴体着陸して滑走路で止まらず、壁に激突して炎上した。韓国消防庁は同日夜、乗客・乗員181人のうち、179人の死亡を確認したと発表した。消防庁によると、乗員2人は救助され、病院に搬送された。 韓国国内で起きた航空事故としては、最悪の死傷者数に上る。乗客175人全員と乗員4人が亡くなった。これまでに88人の遺体の身元が確認されたという。 韓国政府は、全国的に7日間の服喪期間に入ると発表した。政府庁舎の旗は半旗に下げ、公務員は喪章を着けるという。 事故機は旅客機はボーイング「737-800」型で、タイ・バンコクから務安空港へ向かっていた。務安は首都ソウルから約288キロ南。 韓国国土交通部は、事故現場からフライトレコーダーを回収したと明らかにした。 消防庁は同日午後、2人を救出したと発表していた。聯合ニュースによると2人は男女で、共に客室乗務員。機体の尾翼側にいたという。 消防当局によると、消防車30台以上が出動した。消防士490人、警官455人を含む1500人以上が救助に向かったという。 聯合ニュースによると、乗客175人のうち173人は韓国人、2人はタイ人だという。 タイ政府は同日午後、22歳と45歳のタイ人女性が事故機に搭乗していたと明らかにした。 ■事故の状況は 韓国交通部の当局者は同日夜、事故の状況について説明。それによると、着陸しようとする旅客機に管制塔がバードストライク(飛行機が鳥と衝突すること)の危険を警告し、着陸を待つよう指示した。約2分後に操縦士が遭難信号「メーデー」を通信。管制塔は反対方向からの着陸を許可し、操縦士はこれを受け入れた。 現場映像には、車輪など着陸用の装置がないまま旅客機が着地し、そのまま滑走路を猛スピードで進んだ末に壁に激突し、燃え上がる様子が映っている。 交通部によると、機長は2019年から機長として乗務しており、飛行経験は9800時間以上だったという。 ソーシャルメディアに投稿された未検証の動画では、旅客機が滑走路を外れて外壁に激突し、機体の一部から炎が上がるのが確認できる。別の動画には、大きな黒煙が立ち上る様子が映っている。 聯合ニュースは空港近くにいたキム・ヨンチョルさん(70)の話として、いったん着陸に失敗した旅客機が旋回し直してまた着陸しようとしたという目撃談を伝えていえる。キムさんによると、「大きな爆発音」が聞こえた後、「空に黒煙が立ち上っていた」という。 同ニュースは、右側の翼から火花が散るのを見たという目撃者の話も伝えた。さらに、別の目撃者は「飛行機が降下するのが見えて、もうすぐ着陸するのかと思ったら、閃光(せんこう)がパッと走るのに気付いた。続いて大きい爆発音があり、煙が立ち上り、その後に爆発が相次いだ」と話しているという。 韓国メディアによると、乗客の一人は家族にメッセージを送り、鳥が「翼にくっついていて」飛行機が着陸できないのだと書いていた。「最期の言葉を書いた方がいいのか」とも書き送ってきたのを最後に、連絡がとれなくなったという。 事故直後から、バードストライクのために着陸装置が故障したのではないかと言われていた。 ■航空会社が謝罪 事故を受けて済州航空は謝罪文をホームページに掲載。「今回の務安空港での事故で被害に遭われたすべての方に謝罪いたします。対応のために最善を尽くします。ご心配をおかけして申し訳ございません」と述べた。 また29日午後に同航空の金二培(キム·イベ)代表らは記者会見し、「責任を痛感している」として、「早期の事態収拾と乗客家族の支援のため努力を尽くします。また、政府と共に事故原因の究明にも最善を尽くします」と述べた。 聯合ニュースによると同社の管理部責任者は同日夜に記者会見し、事故は「整備の問題によるものではない」と述べ、定期点検に加え、出発前の整備点検は「徹底的に行った」と話した。 ボーイング社は、「済州航空と連絡を取り合っており、支援を提供するため待機している。愛する人を失った家族の皆さんに心よりお悔やみを申し上げると共に、乗客や乗員のことを思い続けている」と述べた。 ■大統領権限代行が現地入り 韓国大統領府によると、同日午後には崔相穆(チェ・サンモク)大統領権限代行が事故現場に入った。崔氏は務安を特別災害区域に指定。これによって、現地の自治体や被害者の支援に政府予算が使えることになる。 崔氏は、「務安空港で今朝、飛行機が滑走路から外れたことにより、多くの命が失われた重大な事態が起きている」、「多くの犠牲者に心からお悔やみを申し上げる。負傷者が速やかに回復できるよう、全力を尽くす。犠牲者を追悼し、遺族の皆さんに誠心誠意、お悔やみを申し上げる」と声明を出した。 韓国政府はさらに、遺族支援のため全力を尽くすと述べた。 韓国では尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を宣布したことを機に、大統領が弾劾され、その権限を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾(だんがい)訴追も可決され、政治的混乱が続いている。その中で経済副首相だった崔氏が、27日から大統領権限の代行に選ばれていた。 タイのペートンタン・シナワット首相はソーシャルメディア「X」に、死傷者の家族をいたわるメッセージを載せた。 韓国の航空業界は、安全性において確かな実績を築いてきたと評価されている。 済州航空は2005年に設立された、韓国最大規模の格安航空会社の一つ。同社が死亡事故を起こしたのは今回が初めて。 (英語記事 South Korea plane crash kills 179, with two crew rescued / Dozens killed in plane crash at South Korea airport)
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