森永乳業の「工場見学」こだわりが詰まった内部。60年代の工場見学実施初期の貴重な写真も
ラインに流れてくるドリンクヨーグルトは、既定の重さに満たないと、ラインからはじかれる。ラインからはじかれた製品はくるくると回っている。 包装前のドリンクヨーグルトがコンベア上に一列で並んでいる様子は、子どもの運動会を見守っているような気持ちになる。ちなみに後工程がつまったり、何かトラブルが起きると、ここで大渋滞が発生することもある(筆者はまだ見たことはない)。 工場見学が終わると、最後はおまちかねの試飲タイム。時期によって異なるが、この日はドリンクヨーグルトを1本もらった。さらに製造工程の説明や、レシピなどが掲載されているノートと、ナップサックの嬉しいお土産付きだ。
ちなみに、同じく工場見学を実施している神戸工場(兵庫県)では、数多くの牛の模型があり、牧場にいるような気分が味わえる。 遊び心があり、楽しく学べる森永乳業の工場見学だが、その歴史は長い。1937年に操業を開始し、1969年に増築リニューアルした京都工場(現在は閉鎖)は、このタイミングで全面ガラス張りのオープン式工場へと姿を変えた。 厳密にはいまの工場見学とは異なるが、この当時には珍しく、外から牛乳の製造ラインを見ることができた。散歩がてら牛乳の製造ラインが見れるということで、多くの通行人も見学に来るなど、話題になったようだ。
1960年代には東京多摩工場で、はじめてガイドを伴う工場見学を開始。最初に訪れたのはニュージーランド人という記録が残っているのは驚きだ。 また沖縄森永乳業の工場見学では、地域の違いを感じることができる。筆者のメモによると、2008年から見学を開始した沖縄森永乳業では、一般的な牛乳が1000mlであるのに対し、沖縄では946mlとのことだ。戦後アメリカの統治下だった沖縄。アメリカ製の充填機が1/4ガロンだったことから、沖縄の工場にはその名残が残っているらしい。
現在は新型コロナウイルスをきっかけに工場見学の見直しを実施。施設の老朽化や場内の導線を加味したうえで、東の主力工場の1つである利根工場、西の主力工場である神戸工場の2カ所に絞られている。なお沖縄森永乳業(現在見学は休止中)では、見学再開に向けて動いているそうだ。 コロナ明けの工場見学再開にあたってサスティナビリティ本部コーポレートコミュニケーション部SCグループアシスタントマネージャーの石原沙紀さんは、食品工場に限らず数多くの見学施設を巡って情報収集をした。そこで実際に得た知見は、先にも述べたエムズルームでの「参加者が触って体験できる展示」やお客様とのコミュニケーションを重視する見学などに生かされている。