サラリーマンが定年後も働いた場合、国民年金・厚生年金はどのくらい増える?元公務員がポイントを解説
「老齢厚生年金」はいくら増えるのか
老齢厚生年金は受給額の上限がないため、定年後に働く期間や受け取る給料によって大幅な増額が可能です。 老齢厚生年金の目安となるのは「報酬比例部分」と呼ばれるものです。この記事では、報酬比例部分を以下の計算式で計算しています。 ・平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降での厚生年金保険への加入月 これを踏まえて、2003年4月以降で厚生年金保険に22歳から60歳まで加入した場合と、22歳から70歳まで加入した場合の受給金額の目安を比較してみましょう。 〈22~60歳まで加入した場合〉 ・20万円:4万1656円 ・25万円:5万2070円 ・30万円:6万2483円 ・35万円:7万2897円 ・40万円:8万3311円 ・45万円:9万3725円 ・50万円:10万4139円 〈22~70歳まで加入した場合〉 ・20万円:5万2618円 ・25万円:6万5772円 ・30万円:7万8926円 ・35万円:9万2081円 ・40万円:10万5235円 ・45万円:11万8390円 ・50万円:13万1544円 70歳まで厚生年金に加入すると、60歳までの加入に比べて月額1~3万円ほど受給額がアップします。年間12~36万円が生涯増額されるため、生活にゆとりを持てるでしょう。 一方、65歳以上も働き続ける場合は、毎月安定した収入が受け取れる分、年金受給額が減らされてしまうケースがあります。この注意点について、次章で解説します。
働きすぎたら年金が全額カットの可能性も「在職老齢年金」に注意
定年後に働く期間が多すぎると「在職老齢年金」の制度により、在職中に受け取れる年金額が減ってしまいます。 在職老齢年金は、70歳未満の人が会社に就職して厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の人が厚生年金保険の適用事業所に勤めた場合に、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる制度です。 在職老齢年金の計算は、以下の基準に則って行われます。 〈基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円以下〉 老齢厚生年金は全額支給。 〈基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円超〉 老齢厚生年金は一部または全額支給停止。支給額は以下の計算式で決まる。 ・基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2 ※基本月額:加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額 ※総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 年金と月に受け取る報酬の合計が50万円を超えるかどうかで、年金の支給額が変わってきます。50万円以下の場合は厚生年金が全額支給され、50万円を超える場合は、一部または全部の年金が支給停止となります。 特に現役時代や定年後に受け取る給与が高い人は、年金+収入が50万円を超えやすく、厚生年金が支給停止となる可能性が高いです。定年後に受け取る給与や賞与を見直し、年金支給停止の対象となるかどうか確かめておきましょう。 一方、在職中には年金が支給停止となるだけでなく、年金額が再計算されるケースもあります。これを「在職定時改定制度」といいます。詳細について、次章で見ていきましょう。