懸念の風来ず人どっと 安堵広がる風の盆 町流しや輪踊り
「坂のまち」が人波であふれた。1日に富山市八尾町で開幕した「越中八尾おわら風の盆」は、影響が心配されていた台風10号が熱帯低気圧に変わり、小雨が降る中、町流しや輪踊りが順調に行われ、町民や観光客に安堵が広がった。 石造りの「おたや階段」下の広場でのステージが有名な鏡町では、カメラを携えたファンが多く見られた。前日深夜から場所を確保する愛好者もいたほか、階段の上にも長蛇の列ができた。 鏡町では強風に備えてぼんぼりを一時撤去したが、1日朝に約90基を再設置した。島崎才(ちから)総代(37)は、雨をいとわず風の盆を楽しみに訪れた見物客に感謝し「自分の町に誇りを持って踊りや演奏を披露できる」と話した。 福岡県から職場の友人と訪れた中村葉子さん(68)は、「無事に飛行機が飛ぶか前日まではらはらしていた。土砂降り覚悟で、全員雨がっぱを持参してきた」と語った。町流しで子どもが踊る姿や、町家の窓の内側に見える着物姿の家族の様子に「町を挙げて盛り上げる祭りだと感じた」と話した。 東町では東町公民館を発着点とし、法林寺や富山第一銀行八尾支店前などを巡るルートを予定通り実施した。富崎宏明総代(47)は前日から雨雲レーダーを常に確認して気が気でなかったと振り返り、無事に開催された町の様子を見てほっと胸をなで下ろした。「今日のために練習してきたので良かった。おわらを楽しみに訪れた皆さんの思いに応えたい」と語った。 千葉県から北陸新幹線で訪れた若井清さん(83)は、妻の則子さん(80)と初めておわらを満喫した。清さんは「一度来てみたかった。あでやかなゆったりとした舞に見入った」と話した。