ブームだけど…… あらためて問う「ふるさと納税」の本質って何?
人は「損をすること」が大嫌いです。そして、「おトクになること」は大好きです。しかし、おトクと見せかけてじつは損なことが、意外と身近なところにたくさん存在しているのです。 実際の人間による実験やその観察を重視し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明する経済学の一分野に「行動経済学」があります。この考え方は企業の広告やマーケティングなどに活用され、日々、私たちの経済行動を左右します。「お買い物3,000円で駐車場代1時間無料」や「ポイント5倍セール」などのとき、無駄な買い物をしてしまった経験はありませんか? つまりはおトクと見せかけて、消費をあおっているという実例の一部です。損得はお金の問題だけに限らず、「時間」であったり、「せっかくの機会」だったり、「不快な気持ち」だったりもします。 この連載は、経済コラムニストの大江英樹さんが、とくにいま話題になっている時事問題を「行動経済学」の観点で、検証し、ブレない「損得感覚」を身に付ける方法を提案します。 第1回のテーマは、おトク感いっぱいで大人気の「ふるさと納税」のついて解説します。
そもそも税って何のため?
ふるさと納税がとてもブームになっています。でもそもそも税金って何のためにあり、そんな中でふるさと納税が生まれたのはどういう理由かということからまず簡単に説明していきましょう。 税というのは一口で言うと、協同組合費みたいなものです。人が社会の中で生きていく上で何でも自分でやることは基本ですが、みんなでお金を出し合って共同でやった方が楽だし、一人当たりのコストも安くつくものがたくさんあります。例えば国防、警察、消防といったものから、道路や橋を作るといった公共の利益になるものは全て社会全体でやった方がいいものばかりです。いわば国や自治体というのは自動的に所属している協同組合みたいなもので、その組合がおこなう事業の費用として組合員から徴収される組合費が税金というわけです。 したがって、税金というのは壮大な徴収と分配のシステムであり、最も大切なことはいかに効率よく徴収が行われ、集まったお金がいかに公平に効果的に分配されるかということです。当然、税金を納めているわれわれ納税者はその仕組みを知り、どのように使われているかをきちんと関心を持って見ていくことが大切なのです。 ところが、働く人の多くを占めるサラリーマンは日頃あまり税金を意識するということがありません。なぜなら自動的に給料から源泉徴収されてしまっているからです。そんな中、サラリーマンが納税と確定申告による還付を通じて税のしくみを正しく理解できる良い機会が生まれました。それが2008年に始まった「ふるさと納税」です。