“紙の本”買わない時代の書店生存戦略 活路はどこに…箕輪厚介氏「変に保護すると時代からもっと取り残されてしまう」
出版社「幻冬舎」の編集者で、実業家でもある箕輪厚介氏は、「フラットに考えたら、そりゃ読まない」と一蹴し、「スマホがあって、無料で映画やLINEができる中で、相対的に下がるのは当たり前。変に保護してしまうと、健全な競争がなくなり、時代にあった変化が阻害され、もっと時代から取り残されてしまう」と問題視する。
近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、タイパ(タイムパフォーマンス)や情報量の観点から「コロナ禍で本を見直す機運が生まれてきた」と説明し、「『この本読みたい』と決め打ちするなら、Amazonで買えばいい。『なんとなく』で、どんな本を読んでいいかわからないときに本屋さんへ行く。書店が新しい作家やIP(知的財産)との出会いの場に変わりつつあり、品ぞろえやコンセプトが重要になってきている」とした。
■電子書籍の普及による影響
紙の本ではなく、電子書籍も普及しつつあるが、8割はマンガなのが現状だ。出版科学研究所「出版指標 年報 2023年版」では、2014年に総額1144億円だった電子書籍市場(電子コミック887億円、電子書籍192億円)が、2022年に5013億円(同4479億円、446億円)に拡大したが、マンガ優勢は変わっていない。 電子コミックの利点として、夏野氏は「1冊読むのに30分かからない。単行本だと数時間から数日かけて読むが、30分で読めるものを持ち運ぶのは嫌だ」と解説し、「本当に好きな書籍は、電子に加えて、物理的なものを2度買いする人も多い」との見方を示す。 背景には「1つのマンガが、全国民に読まれることがあまりない」という実情があり、「趣味に応じた“推しの作品”がある。たくさんの種類から、自分にハマったものを好きになって、次が出たらまた買う。この多様性がカギではないか」と述べた。
■本屋さんが生き残るには
では具体的に、どんな手段で書店は生き残るのか。本間氏はその策として、書店で選んだ書籍を電子で買う場合に、QRコードを読み込むなどで、書店にも紹介料が入る形にすることを挙げる。「電子書籍が売れた場合に、うちに少しでも手数料が入るようにならないか。現状はショールーム代わりで、『これよさそうだね。Amazonで買おうか』といった客の会話が聞こえてくる」。 また、本を非課税にして、消費税10%分を書店の利益にすることや、出版業界内での書店の取り分を変えることなども効果的だと語る。現状では、本が売れても利益は2割にとどまり、万引きされれば、その5倍を売る必要がある。「他国では非課税や軽減税率の対象となる事例もある」と補足した。 箕輪氏は、書籍をコンテンツにおける“ウイスキーの原液”と例え、「YouTubeで取り上げられると、炭酸が混ざったハイボールになり、飲みやすくなる。ただ出版社も書店も、原液にこだわっている。動画もイベントもやって、コミュニティーを設計するのが、生き残るための時代の変化だが、現状ではそこを他者に取られている」。 その上で「利便性ではテクノロジーに負ける」と苦言を呈する。「便利戦争からいかに離脱して、意味合いを持たせるか。スナックも『ママに会いたい』と、気づけばお金を使っている。書店は本来、町に根付いた知能のたまり場だった。そこをもう一度復活させることが必要ではないか」と提案した。 (『ABEMA Prime』より)