中村時蔵&梅枝、初舞台踏む小川大晴に太鼓判「本番に強い」「物怖じせず冷静」
6月歌舞伎座『六月大歌舞伎』に出演する歌舞伎俳優の中村時蔵、中村梅枝、小川大晴が取材に応じた。同公演にて、時蔵が初代中村萬壽(まんじゅ)、時蔵の長男である梅枝が六代目時蔵をそれぞれ襲名。また、梅枝の長男・大晴が五代目中村梅枝として初舞台を踏む。 【全ての写真】『六月大歌舞伎』に出演する中村梅枝、小川大晴、中村時蔵 昼の部は、六代目時蔵襲名披露狂言として、時代物の傑作『妹背山婦女庭訓』の「三笠山御殿」を上演し、祖父や父も襲名披露として勤めた女方の大役・お三輪を、新時蔵が初役で勤める。夜の部では、初代萬壽襲名披露、五代目梅枝初舞台として情趣溢れる舞踊『山姥』で新たな門出を祝う。ゆかりの出演者がそろい、いずれの演目も出演者による劇中口上が行われるおめでたい雰囲気溢れる公演になる予定だ。 襲名を控える心境を問われた時蔵は「まだまだやり残したことがあるのではと、不安にかられるが、お稽古が始まると、没頭できるので、そういう不安も忘れられますね」と穏やかな表情。同じ質問に、梅枝は「数日前にいただいた台本の宛名が、『時蔵様』になっていて、それで実感しましたね。いつから“時蔵”って呼んだらいいのと聞かれることもある」と笑顔を見せた。 昼の部『妹背山婦女庭訓』の「三笠山御殿」について、時蔵は「私も時蔵襲名で、やらせていただいた、我が家には縁がある演目。梅枝がどう演じてくれるのか楽しみ」と期待を寄せる。祖父、父に続き、お三輪を演じる梅枝は「お三輪は女形なら、誰もが憧れる役。初役で演じられるのも、めぐり合わせだと思いますし、ファンタジックな世界観を存分にお客様に届けられるのが目標。父からいろいろなダメ出しをいただきながら、少しでも近づけたら」と背筋を伸ばした。 夜の部『山姥』では、大晴が怪童丸(後の坂田金時)を勤めることに。時蔵は「彼は女役が嫌いみたいで、見得がしたいって言うものですから(笑)。怪童丸は、金太郎ですからね。ちょうどいいと思いますし、ひと月の間、風邪をひかずに元気に勤めてくれれば」と目を細める。また、梅枝は「幸い、子役として舞台を積んできたので、改めて梅枝になるからといって、気負わずに」と親心。当の大晴は「カッコよく演じたい!」と怪童丸役に意気込みを示した。 改めて、大晴の成長ぶりが話題にあがると、時蔵は「度胸が座っていて、本番に強い。ダメ出ししても、必ず克服する。それは誰もができることじゃないですし、意見を聞いて直せるのは大切なこと」と感心しきりで太鼓判。父の言葉を受けて、梅枝も「同じ役者として、本番に強いのは、うらやましいですね。お子さんはみんな、そうかもしれませんが、舞台上でも物怖じせずに、冷静」と誇らしげだった。 取材・文・撮影:内田涼 <公演情報> 歌舞伎座「六月大歌舞伎」 【昼の部】 川村花菱 作 齋藤雅文 演出 一、『上州土産百両首』 二、『義経千本桜』 所作事 時鳥花有里 六代目中村時蔵 襲名披露狂言 三、『妹背山婦女庭訓』 三笠山御殿 劇中にて襲名口上申し上げ候 【夜の部】 曲亭馬琴 原作 一、『南総里見八犬伝』 円塚山の場 初代中村萬壽 襲名披露狂言 二、『山姥』 五代目中村梅枝 初舞台 劇中にて襲名口上申し上げ候 河竹黙阿弥 作 新皿屋舗月雨暈 三、『魚屋宗五郎』 初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台 2024年6月1日(土)~6月24日(月) ※11日(火)、17日(月) 休演 会場:東京・歌舞伎座