柄本佑「藤原道長役、最終章入口の撮影に立った今、“三郎としての人間性”が、より大事だと感じている」
◆娘のために「源氏物語」をまひろに依頼 第31回で道長はまひろに一条天皇に献上する物語の執筆を頼みますが、政治に意識は向いてはいるけれども、それよりも家族の幸せを考えたうえで、お願いしにいった気がしています。まひろの前でだけは唯一情けなさも見せることができるから、「一条天皇が彰子のところに行ってくれないんだ!」とすがるような思いでいて。何とかしてくれないかと言えるのは、まひろしかいない。だから、今考えてみると、道長は非常にパパをしています。 そんなところから政治につながるので、臆すことなく振り切って演じて、もうめっちゃパパしてやろうと思ってやっていたような感じがします。「うちの娘のために」と、頼みに行くといいますか。できあがった物語が成功するか否か感想をまひろに話すんですが、正直に道長は「かえって帝のご機嫌を損ねるのではないか」と言っているんですよね。でも、とにかくお前は最後の一手なんだ、と。今までの関係を決算するようなことがあり、さて次に進もうという道長とまひろの印象的なシーンもあって。僕もまだ見ていないので、楽しみにしています。 まひろと道長が月を見上げてセリフを言うシーンもあるのですが、道長は非常に真っ直ぐな人だと思っているので、きっと道長はまひろへの思いを吐露したのではないかと。あと散楽の一員・直秀(毎熊克哉)のことに思いを馳せるようなセリフも出てきたり。撮影が大変だったので、これも印象深いシーンになりました。 『光る君へ』の撮影に入って、1年と少し経過しました。現段階では、まひろが内裏(だいり)に上がって「源氏物語」を書くところまではオンエアされていませんが、撮影では今ものすごく書いていて、めっちゃ紫式部ですよ(笑)! 吉高さんが筆の練習をしていたんですが、女房装束で座っていて。これからその書き姿がドラマの中にいっぱい出てくると思いますけども、シルエットから何から、紫式部そのものなんです。その姿を最初に見た時に、衣装の着こなしも非常に美しいのですが、それ以上に、紫式部としてどんどん奥が深くなっている感じがしました。 まひろが本気で「源氏物語」に取りかかっている。その表情と目線との芝居のやりとりの時は、ちょっと気を抜いたら道長がタジタジになってしまうぐらいの強さです。とてもすごいことになっているので、ぜひお楽しみにしていてください。