市の職員は「把握しきれない数です」とポツリ…!止まらない「メガソーラー開発」、外資系企業が釧路に群がる「裏事情」
太陽光事業者は高く買い取ってくれる
背景には'12年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」がある。再生可能エネルギーで発電した電気を、国の定めた価格で電気事業者が買い取る制度だ。 メガソーラーの買い取り期間は20年で、設備認定を受けた年度の価格がずっと適用される。FITが始まった'12年度は1kWh当たり42円と超高額。それを目当てにしたメガソーラー業者が急増し、ドイツやスペインといった外資系企業による土地買収も相次いだ。 「広く平坦な土地」「長い日照時間」「湿原から市街地が近い」という3点が揃う釧路は、開発に絶好の土地。なかでも集中しやすいのは、湿原の南側にある「市街化調整区域」だという。 地元の不動産業「ハウスドゥ釧路中央店」の佐伯友哉店長が語る。 「この辺りは'70年代に『原野商法』で買われた土地が多く、売却したがっている地主が増えています。かつて1坪2万~3万円で購入した土地が、現在は坪100円程度にしかなりません。しかし、太陽光事業者なら、まとまった広ささえあれば坪500円で買い取るケースもあります」 原野商法とは、山林や原野を「将来必ず値上がりする」などと勧誘して販売する詐欺的商法。いま、親から土地を相続した子供たちが手放したがっているのだ。
ドイツ系企業の強引なやり方
太陽光発電事業者に対抗しようと、釧路市民のなかには自ら土地を購入する人たちも現れた。大学時代に生物学を学び、現在は公共工事のアセスメントなどを行う照井滋晴さんもその一人だ。 「広大な候補地の1区画でも所有してしまうと、事業者は施設を作りづらい。たとえ小規模な太陽光発電施設だとしても、そこにいた希少種が潰されていくのを見て来ました。これ以上の開発が続くとまずいと思い、仕事で稼いだ資金をつぎ込んでいます」(照井さん) だがそれでも、開発は止まらない。 市内から西へ40km離れた釧路市音別町。ヒグマがウヨウヨいて地元民もハンターを伴ってしか入らないという林道を約4・5km進むと、行き止まりの先にポッカリと開いた空間が現れる。重要な湿地がまとまる「馬主来沼」だ。 現在、この土地を取得したドイツ系企業が330haを切り開き、12万枚のソーラーパネルを設置する計画が進行。そのやり方は強引で、昨年末には保安林内に無許可で水路を掘削したとして森林法違反で処分を受け、環境相が法令順守の徹底を求める意見書を提出するなどの騒動となった。 上空から見ると、開発現場の巨大な水路がはっきりとわかる。長さ250m、幅4m、深さ1mというから、埋め戻すのも容易ではないだろう。 後編記事『市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景』へ続く。 「週刊現代」2024年10月19日号より
週刊現代、形山 昌由