日銀政策金利「まさかの」2%到達が「現実味」を帯びている3つの理由
市場予想を超える、日銀利上げ幅の可能性
ここで政策金利に関する市場関係者の中心的予想を、QUICK月次調査<債券>(調査期間は2024年11月26日~11月28日、回答者は118名程度)で確認すると、2024年末が0.50%、2025年6月末が0.50%、2025年12月末が0.75%、2026年12月末が1.00%となっている(中央値ベース)。 筆者の政策金利予想はやや高めであるが、来年も利上げが続くこと自体は多くの市場関係者に想定されている。 続いて、日銀の利上げが想定以上に進む可能性について考えてみたい。消費者物価が日銀の目標を上回る中、賃金上昇が定着しつつある現状、日本経済の足かせとなっている個人消費が底堅さを増せば、日銀は将来的な政策対応余地を確保する狙いもあり、粛々と利上げを進める可能性がある。 最も蓋然性の高い利上げペースは半年に25ベーシスポイントであり、それが2026年も続けば政策金利は1.5%になる。また次の3点を踏まえると、「まさかの2%」も現実味を帯びる。
【1点目】家計の所得や利息収支の改善をもたらす利上げ
1つ目は利上げがマクロ的な家計の金利収支改善(預金や債券からの受取利息、住宅ローンの支払利息など)をもたらすこと。日銀が4月に公表した金融システムレポート(FSR)には「マクロ的に見ると、家計部門においては、金利関連資産が負債を大きく上回っている。景気改善とそのもとでの金利上昇は、家計の所得や利息収支の改善につながることが見込まれる」と言及されている。FSRが示した試算は下記(赤線は筆者)のとおりである。 まず住宅ローンを抱える金融資産がネットマイナスの世帯は、住宅ローン金利の支払い増加等によって金利収支が悪化する。もっとも、そうした世帯は総世帯の23%を占めるにすぎない。 一方で全世帯の77%を占める、住宅ローン負債がなく金融資産がネットプラスである世帯では、預金利息の増加などによって金利関連収支が好転する。政策金利が1%ポイント上昇した場合の試算では、住宅ローンあり世帯の金利収支が約1.1%悪化する一方、住宅ローンなし世帯の金利収支は約0.7%改善することで、家計全体としては「金利のある世界」で恩恵が及ぶことになる。 もちろん、金融資産が高齢者に偏在している現在の状況を踏まえると、増加した金利収支が直ちに消費に向かうのかは疑問だが、金融の引き締め効果が住宅ローン保有者に限定されるのであれば、マクロの個人消費が打撃を受けない可能性があることには留意しておきたい。