美術館にモードが誘われるとき:ポンピドゥー・センターの特別展から見るアートとファッションの共鳴
絵画と服飾を見事に橋渡しした展示が今パリで行われている。ポンピドゥー・センター内、国立近現代美術館で行われている特別展「La traversée des apparences Quand la mode s’invite au Musée(見えるものの向こう側 美術館にモードが誘われるとき)」がそれだ。
同展は、20世紀および21世紀のファッションデザイナー17人の衣装を、同美術館の5階にある常設の近現代コレクションに合わせる形で展示。1905年から1970年代頃までの各画家と、服飾デザイナーの共鳴を楽しむ催しだ。 展示手法は、絵画に合わせた衣装を対で陳列するというもの。衣装が新たに増えただけで、展示室がまったく新しいものになっている一方で、以前からそこに陳列してあったかのような親和性も、加えられた衣装が見せてくれる。
キュレーターを務めたのは、イヴ・サンローランの伝記を書いたジャーナリストのローレンス・ベナイムだ。同氏によるキュレーションは、2022年に同所で開かれた「イヴ・サンローラン・オ・ミュゼ」以来である。
展示室へ入ってみよう。最初にテベ・マググとエルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーが出迎えてくれた。
南アフリカ出身のマググは、アフリカ大陸出身のデザイナーとして初めてLVMH賞を取った人物だ。衣装自体もツワナ人(アフリカ南部に暮らす民族)の母子が描かれたアフリカ的なモチーフ。しかし、そこにドイツ表現主義のキルヒナーが描いた『鏡の前の女性』が、しっかりと呼応している。 奥へ進む。イヴ・サンローランとアンリ・マティスの共演が現れる。
かつて、サンローランは「女性のもっとも美しい服は、裸体だ」と述べたという。そのサンローランが1969年秋冬オートクチュールコレクションで発表した衣装が、マティスの『豪奢Ⅰ』にあてられた。マティスはフォーヴィスムを体現した20世紀前半を代表する画家。巨匠同士が、しっかりと四つに組んだ演出だ。