日本と大きく違う米国の遺産課税方式…遺産分割協議書が不要、高額の整理費用、遺産の中身が外部に筒抜け
相続税の課税方式について、国によってその方法には違いがあります。米国では司法が遺産処理に関わり、遺言執行者を納税義務者として課税する「遺産課税方式」を採用しています。遺産分割協議書が不要であったり、遺産の中身が外部に筒抜けであったりするなど、日本とは大きく異なります。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。 【第21回】 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)> 2023.02.07
米国では相続人が遺産分割に関与しない
相続税制において、米国のように遺産課税方式を採用している国と、ドイツ、フランスのように取得課税方式を採用している国があります。日本は中間的な法定相続分課税方式です。 それぞれの方式を採用した背景には、家族制度、親族法などの変遷があり、一概に、どれがベストという判定は、難しいのが現状です。日本税理士会連合会では、相続課税の方式を取得課税方式に改正すべきという意見も出ています。 米国の場合、遺産課税方式が採用されており、被相続人の遺産に課税が行われます。 遺産税の申告書は、遺言のある場合には遺言執行人(executor)、遺言のない場合には管財人(administrator)あるいは遺産の所有者が作成して提出。米国の遺産税の処理は司法(検認裁判所)が遺産の処理に関わり、遺言執行人等は裁判所により選任されることになります。このような手続きをプロベイト(検認)と呼んでいます。 仮に日本であれば相続が開始されると、遺言がないと、相続人が遺産分割協議書を作成することになります。ですが、米国の場合は遺産の整理の段階で相続人が関与することはなく、管財人が遺産の整理を行うのです。
司法が遺産処理に関わる「プロベイト」の問題点とは
米国で採用されているプロベイトにはいくつかの問題点があります。 第1は、終了まで通常で数年間を要するということで時間がかかります。たとえば、ロック歌手のプリンスの遺産相続の処理は6年も要しました。 第2は、弁護士などが裁判所から選任されて遺言執行人として遺産の整理を行いますが、その費用がばかになりません。これをきらって、プロベイトを回避する人がいます。 第3は、プロベイトは外部の者による遺産内容の閲覧が可能であることから、遺産の中味を知られることになります。遺産を信託することでこの公開を回避することもできます。 第4は、プロベイトの執行中に生じた故人所得の処理が必要となることです。被相続人の死後に所得が発生すると、基本的にはこの所得は遺産財団(エステート)に帰属し、管財人が代行することになります。そうなると相続人が蚊帳の外に置かれます。
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