禁輸から1年…ホタテ“脱中国”へ新戦略【WBSクロス】
福島第一原発の処理水放出をめぐり、ホタテの最大の輸出先だった中国が禁輸措置をとってから1年が経ちました。そのピンチをチャンスに変えようという動きが広がっています。 北海道・枝幸町。旬を迎え、今は1隻当たり20トンものホタテが水揚げされています。ここでとれるホタテは身が大きく、甘みが強いのが特徴です。 トラックの荷台からはみ出すほどの大量のホタテが向かった先は、殻むきなどを行う加工業者です。ホタテの身を殻から外し、鮮度の良いまま急速冷凍。「玉冷(たまれい)」と呼ばれる冷凍貝柱で寿司や中華料理など幅広く使われます。 倉庫には出荷を待つホタテが山積みになっていました。ただ、ホタテ加工会社の社長によれば中国が禁輸措置を取った去年の8月下旬頃は「売れるかどうか分からなかったので、市場も『まだ出荷しないでくれ』と」として、なかなか出荷できなかったと言います。 そのため出荷価格にも影響が出ました。禁輸前の価格は1キロ3300~3500円ほどでしたが、処理水の放出後は2400円台と25%も下落したのです。そこで売り上げが減った分の補償を東京電力に求めたといいます。 「うちは1500万くらいの補償を申請したけどゼロ円。風評被害ってどうやって証明するの?」
輸出多角化で価格上昇
ただ1年が経った現在の状況を聞くと、意外な答えが返ってきました。 「ちょっと値段は回復しているような状況。安心している」(ホタテ加工会社の社長) 現在は処理水放出前の9割ほどまで出荷価格が回復したといいます。その背景にあったのは、輸出先の多角化に向けた取り組みです。 8月21日、東京で開かれたのは、農水産品に関する展示会「アグリフードEXPO東京」。その一角でジェトロが主催する海外のバイヤーとの商談会が開かれていました。 ジェトロではホタテなどの中国に代わる輸出先を開拓するため、2023年度だけで、こうした商談会を1400件以上開催。効果も出始めていて、今年の上半期、UAE(アラブ首長国連邦)へのホタテの輸出は1年前の2倍近くに拡大しています。UAEのバイヤーも「日本のホタテの需要はどんどん増えている。日本料理だけでなく、フレンチやイタリアンでも使われている」と話します。 インドのバイヤーも商談を行っていました。インドへの輸出も規模は小さいながら、30%以上増えています。全体の輸出規模は禁輸前を下回っていますが、中国への輸出がゼロになる一方で、タイやベトナム、アメリカ向けは大きく拡大。価格の上昇にもつながっているのです。 「『余っていて安い』ということは全然ない。足りない、高い、欲しい」(水産物卸売業者)