なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由
調剤薬局が生き残るには
さて、このような薬剤師と調剤薬局を巡る客観的な数字を聞くと、「調剤薬局の倒産が増えている」というニュースの受け取り方も全く変わってくるのではないか。 コンビニやファミレスでも人口減少によるカニバリが起きて、店舗の整理・再編を余儀なくされているこの国で、時代に逆行する形で薬剤師も薬局も右肩上がりで増えていけば、その反動で「淘汰(とうた)」が始まるのは当然なのだ。 こんな分かりやすいレッドオーシャンで、調剤薬局が生き残っていく術はあるのか。個人的には「薬を出さない」という方向性に活路があるのではないかと思う。 一体どういうことか順を追って説明しよう。 まず、王道の方法は「M&Aなどによる規模拡大」である。 厚生労働省の第1回薬局薬剤師の業務および薬局の機能に関するワーキンググループ(2022年2月14日)に提出された資料を見ると、近年、同一法人が運営する店舗数が急速に増えている。2013年に20店舗以上を運営している法人は17.6%だったが、それが年を追うごとに増えて、2021年になると38.4%と4割近くになっている。 調剤薬局も規模が大きくなればなるほどメリットがあることは言うまでもない。薬剤師の処方せん処理枚数は1日40枚(平均)と上限が決まっているので、多くの薬剤師を雇えるところほど収益が上がる。薬を卸から大量に仕入れるので、コスト面で有利になる。 ただ、何よりも大きなメリットは「投資」ができるので、「異業種とのシナジー効果」が狙いやすいことだ。
調剤薬局大手が人気雑貨店を子会社化
分かりやすいのは、調剤薬局大手アインホールディングス(札幌市)が2024年7月に行ったインテリア雑貨専門店「フランフラン(Francfranc)」(東京都港区)の子会社化である。 アインHDは調剤薬局「アイン薬局」を全国で1231店舗展開している(2024年4月期末)。個人経営の調剤薬局をM&Aで傘下に収めるなど、積極的に規模拡大をしてきた。 ただ、先ほどから申し上げているように、調剤薬局は飽和状態なのでこの路線はどこかで限界がくる。そこで次の成長エンジンとして期待されているのが、コスメを中心に健康食品なども扱う新業態「アインズ&トルペ」だ。 この店の主な客は女性で、新宿など都市部を中心に83店舗を展開している(2024年6月時点)。しかし、「へえそんなのあるんだ」と思った人も多いようにまだ知名度が低い。そこでFrancfrancの出番だ。2024年7月時点で国内152店舗、海外9店舗を展開している同店は知名度が高く、実績もある。コラボ店舗などを展開していけば、アインズ&トルペにもシナジー効果が得られるはずだ。 調剤薬局にとって「M&Aなどによる規模拡大」は、厳しい競争を強いられる調剤薬局の中で生き残っていくだけではなく、異業種参入などで「薬を出さない稼ぎ方」を目指せる「一粒で二度おいしい施策」なのだ。