捕獲開始から約30年。奄美大島「マングース根絶」ドキュメント!!
わなは島中に約3万個設置されています。かなりの数ですから、捕殺式の罠を点検に行くのは月に1度程度です。 生け捕り式のわなはマングースの入っているカゴごと持ち帰り、小屋で飼育して新しいわなやエサの実験などに利用していました。生け捕りわなは毎日点検に行かなくてはいけないのでかなり体力を使いました」 前出の阿部氏がわなについて解説する。 「捕殺式のわなでマングースだけが捕れれば問題ないのですが、天然記念物のルリカケスやケナガネズミ、アマミトゲネズミやほかの固有種などもかかってしまいます。そこでマングース以外の動物がわなにかかった場合、生きたまま逃がさなくてはいけないので、生け捕り式のわなは毎日点検に行く必要があるんです。 基本的にはマングースの多い場所には固有種などが少ないので捕殺式のわな。マングースが減ってきた場所では固有種などの生息が回復してくるので生け捕り式のわなを設置するようにしていました」 07年になると、マングース探索犬も投入される。バスターズの後藤さんが話す。 「探索犬も2種類います。マングース生体の探索犬と、マングースの糞を専門に探す犬です。生体を探す犬はマングースを見つけると追いかけて、マングースは木のうろ(幹に開いた穴)などの隙間に隠れます。犬はその場所で吠えているので、煙幕などでいぶして弱らせて捕獲します。 糞を探すのは、その地域にマングースがいるかいないかを確認するためです。 奄美大島にはハブがいるので、探索犬が山でマングースを追いかけていると、気づかないうちにハブに噛まれていることがあります。脚が腫れていて2本のハブの噛んだ痕がついているので、慌てて犬を担いで山を下りて動物病院に連れていくんです。 ほとんどの犬はハブに噛まれているのではないでしょうか。バスターズにもハブに噛まれた人はいますし、ハチの巣もたくさんあって、ハチに刺されていないバスターズはいないと思います」 なぜ、命の危険を感じてまでマングースの捕獲をするのか。そのモチベーションはなんなのか。 「もし、われわれが対処をしなかったら、おそらくアマミノクロウサギやケナガネズミなど奄美の貴重な動物は絶滅していたと思います。私が島に来たときは希少なネズミは見ることがないくらい少なかったのに、今は少しずつ復活してきているというのがひとつです。 もうひとつは21年に奄美大島などが世界自然遺産に登録されたことです。17年に世界遺産に推薦されましたが、外来種対策などが不十分だということなどもあって登録延期になっていたんです。それが頑張り続けるモチベーションになりました」