コロナ禍で進む「GIGAスクール構想」 デジタル教科書への期待と懸念
「これまでの実証研究では、児童生徒のクリック数から、どこに関心を持っているか、どこがわかりにくいかといったことを推定できることが示唆されました。こうしたデータの解析によって、個別最適な学び、つまり児童生徒が苦手とする箇所、関心を持っている箇所を見つけて適切な学習支援につなげられると考えられます」 デジタル教科書には、児童生徒の学習意欲を向上させ、多様なニーズに個別対応できる可能性がある。しかし、それによって成績が上がるのか、深い理解に到達するのかはまだ明らかではない。今年度始まった「デジタル教科書実証事業」では、紙とデジタルの教科書で学習効果にどんな違いがあるかの検証もされる。それぞれの長所と短所を見極めることが、教育の未来を左右することになる。
--- 緑慎也(みどり・しんや) サイエンスジャーナリスト。1976年大阪府生まれ、福岡育ち。出版社勤務を経て、フリーランスとして、週刊誌や月刊誌などにサイエンス記事を執筆。著書に『消えた伝説のサル ベンツ』(ポプラ社)、『認知症の新しい常識』(新潮新書)、共著に『ウイルス大感染時代』(KADOKAWA)、『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(講談社)、訳書に『フィボナッチの兎』(創元社)など。