コロナ禍で進む「GIGAスクール構想」 デジタル教科書への期待と懸念
外部リンクに飛べるデジタル教材も
現状、デジタル教科書は、内容もレイアウトも紙の教科書とまったく同じでなければならないと規定されている。ただし、例外が許されている機能もある。拡大や縮小、図版などの一部の拡大表示、ツール上のペンやマーカーによる書き込み、音声読み上げ、ルビを振る──などだ。 教科書などを出版する東京書籍教育文化局の長谷部直人さんも、デジタル教科書に様々なメリットを感じているという。 「算数では図形の苦手な子が、立体図形を回転させたり、立体を開いて展開図にしたりするアニメーションのおかげで図形を理解しやすくなった、英語ではネイティブの発音を簡単に聞けるようになった、あるいは、ポップアップで問題を拡大表示できるので集中しやすくなった、といった声を聞いています」 デジタル化されたコンテンツの大きな特徴は、リンクを通じて膨大な情報にアクセスできることだ。だが、デジタル教科書から直接外部サイトへリンクすることは基本的に認められていない。教科書は検定による審査を必要とするが、リンク先の動画なども含めて検定対象とするかどうか、決まっていないためだ。だが、工夫の余地はあると長谷部さんは言う。
「たとえば、副教材的な、教科書に準拠するデジタル教材であれば外部にリンクを張ることが認められています。このあたりは微妙ですが、各社の工夫ですね。教科書からインターネット上の学習コンテンツに接続する際は、紙とデジタルで差がつかないように、紙の教科書にQRコードを付けて接続できるようになっています」 デジタル教科書は2024年度の本格導入を目指している。今年5月、萩生田光一文科相はデジタル教科書への全面移行ではなく、当面は紙と併用する考えを示した。 教育現場でデジタル端末を使うことには様々な議論がある。長時間の動画視聴に伴う視力や学力の低下への不安もある。スマートフォンなどデジタル端末の利用が、人の精神状態に悪影響を及ぼしているとする『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)も話題になった。 さらに、学習効果において紙の教科書に劣るのではないかという意見もある。