コロナ禍で進む「GIGAスクール構想」 デジタル教科書への期待と懸念
デジタル化で増えた日記の文字数
デジタル教科書が教育現場に広がりつつある。学校教育法が2019年4月に改正され、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できるようになった。文部科学省は当初、2023年度中に小中学校の児童生徒に、1人1台、タブレットなどのデジタル端末を貸与する「GIGAスクール構想」を進めようとしていたが、コロナ禍によってICT活用の声が高まり、計画を大幅に前倒しした。 端末の環境が整った今年度からはデジタル教科書を一部の学校で利用する実証事業も始まり、現在、小・中でのデジタル教科書の利用率は約4割まで上昇した。 そんななか、他校に先駆けて2018年に小5の1クラスの児童に1人1台のデジタル端末を配り、翌年にはデジタル教科書も使いはじめたのが小金井小学校だ。当時小5クラスの担任をしていた鈴木秀樹さんは、デジタル端末の活用により、発達障害や学習障害などの子どもとともに学ぶ仕組みを作りたかったという。 「ディスレクシア(識字障害)のように考える力に問題はなくても、読み書きに困難を抱える人は数パーセントいます。少し苦手な子も含めれば、どこの学校でも1クラスに一定数いるんじゃないでしょうか。そうした子にデジタル教科書が助けになると思ったのです」
デジタル教科書を使用してまもなく、役立つのは学びに困難を抱えている子だけではないことに気づいた。音声読み上げ機能を使って、ある物語を各自ヘッドホンで聞いてもらった。すると、聞き終わる時間が児童ごとにバラバラだった。各自でわかりにくかったところを聞き直していたのだ。 「それまで国語の授業で音読する時は、最初から最後まで一気に読んでいました。でも、読むことが苦手な子でなくても、もう一回聞いてみたい箇所がある。そういうニーズを見落としていました」 デジタルを導入するなかで、児童の反応が変わったことが他にもある。 「本文の文章をコピーして引用し、『このセリフがどうだった』と表現豊かに感想文を書くようになりましたね。全体に書く量が増えました。クラスの課題である日記は、紙だったときは平均して1回150字ぐらいだったのが、デジタル化したら300~400字に増えました。しかも、文法的な誤りも減った。紙に書かせる時は『書き直して』と言っても『もう終わり』と頑として拒否する子ばかりでしたが、デジタルだと削除したり書き足したりが簡単なので、文章を何度もいじります。文章力が向上したと感じています」 最近では、同じ教室にいながらオンライン会議システムでの議論もした。三十数人の児童を3人ずつの小グループに分け、全員にヘッドホンを着けてもらい、グループトークを試みた。 「予想以上の効果がありました。少人数のグループでの議論なので、発言の順番がはっきりして、横やりを入れにくい。だから、内気な子にとっても発言しやすくなったんです」