コロナ禍で進む「GIGAスクール構想」 デジタル教科書への期待と懸念
教育現場に1人1台のタブレットやパソコンを配布する「GIGAスクール構想」が今年度から本格的に始まった。小中学校ではデジタル教科書の導入も進んでいる。その一方で、急速なデジタル化に対し、慎重さを求める研究者もいる。デジタル教科書の導入で、生徒・児童の理解度にどのような変化があるのか。研究者の懸念する点とは何か。先端の教育現場を取材した。(文・写真:サイエンスジャーナリスト・緑慎也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
静かな教室の活発なオンライン
「自分の意見をまとめて投稿してください」――教師が声をかけると、児童たちは一斉にキーボード付きのタブレット端末(Microsoft Surface Go)を操作しはじめた。 カタカタ、カタカタ。教室内に響くのは打鍵音だけ。ある児童はパワーポイントのスライドに文章を書き込む。別の児童はデジタル教科書から抜き出した文章を、黒板に似せたアプリ画面に貼りつけている。教師はその様子を見守り、ときどき児童のそばに寄って声をかける。東京学芸大学附属小金井小学校6年2組のある日の一コマだ。
国語の授業で出された課題は、星野道夫のエッセイ「森へ」の最終段落の感想をまとめること。児童たちは思案し、それぞれの「作品」が完成すると、チャットやコラボレーションアプリTeamsに投稿。すると、他の児童がコメントをつけはじめた。 ある男子の感想を別の男子が「……と書いているところがいいと思いました」と評価すれば、ある女子の感想に男子が「……したほうがより伝わると思う」と寄せた。一見、教室は静かでも、オンライン上のチャットルームでは活発な交流がくり広げられているのだ。 キーボードで感想を書くなどデジタル端末だけで作業を完結する児童もいれば、紙の教科書を読んで紙のノートに考えを書き、それを端末のカメラで撮影して、Teamsに投稿する児童もいる。「そのとき学んでいる教材や、その日の気分によって紙とデジタルを交互に使っている」という。