石破氏が「新派閥」自民党の派閥とは? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
人材育成などで派閥の功績も
「三角大福中」や「安竹宮」(安倍晋太郎、竹下、宮澤の各氏で派をあげて首相を競った)時代を知る政治家や記者の多くがこう言います。「ロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件……。確かに自民党の腐敗はひどかったし、政策無視の政争も醜かった。でも」と。当時の政治家は今に比べてスケールが大きく、その育成は派閥の功績だったかも知れないというのです。 中選挙区時代は同じ選挙区の自民党議員と似たり寄ったりでは勝ちが覚束ないので違いを出すためにもさまざまな意見や主張が交わされました。派閥の領袖や先輩議員はカネを配るだけでなく選挙のイロハから教え込み、当選後は派閥ごとの得意分野の委員会などに所属して「族」となっていきました。この「族」もまた派閥政治の弊害とみなされる半面、一定分野に精通した専門家を育てたという面もあります。派閥を継承させるのが目的とはいえ有望な若手・中堅を次代の担い手に引き上げようという気風もみなぎっていました。田中氏は佐藤派に属しながら分離独立して田中派を立ち上げ、竹下氏はその田中派から分離独立しました。いわば飼い犬に手をかまれたも同然ですが、それでも「こいつはできる」という人材を排除せず要職にすらつけたのです。 中選挙区は総得票の3分の1程度かそれ以下でも取り込めば当選可能でした。だから明確なカラーを打ち出しやすかったという面もあります。ところが小選挙区は仮に2大政党の激突となれば理論上51%を制しなければなりません。どうしても総花的な主張になりやすくなります。 選挙区の小ささも問題で例えば東京都世田谷区は2つの選挙区をまたいでいます。区長選挙より狭いのです。当然そこでの議論も天下国家より身近な話題となりがちです。一方で「勝てる候補を」と考えるとどうしても地元に知名度がある二世や世襲が増えてきて大衆の生活目線など味わった経験のない「殿様」「姫様」を擁立する傾向にあります。