スーパーセブンとはどんなクルマか? 天才的な「割り切り」の設計
長寿車ゆえの部品難
セブンはおよそ60年現役と言う異常に長寿なクルマだ。量産車の部品を流用して作られるセブンにとって不幸なことは、時間経過と共に自動車メーカーのカタログから安価な量産FRが消えてなくなり、みなFFになってしまったことだ。セブンが登場した時どこにでも転がっていて、極めて安価だったFR用のエンジン、ミッション、プロペラシャフト、デフと言った部品が手に入らなくなっていく。 1990年頃、ニア・セブンを製造していたメーカーは等しくこの部品供給問題に苦しむことになる。それぞれに解決方法を模索したのだが、そこにこそクルマに対する見識の差が表れた。原初の設計でチャプマンが何を考えていたかをトレースできるエンジニアと、今目の前にある部品のことしか考えられないエンジニアが歴然とわかれたのだ。
設計の思想性の有無
オリジナルのリアサスペンションはフォード製のFR用リアデフを三角アームで吊る方式だった。このリジッドアクスル式ではデフとケースが一体化しており、ケースが左右輪とデフを繋ぐ役割をしていたのだが、英国内で調達できるFR用リアデフが無くなったので、ケータハムではド・ディオン式を採用した。 ド・ディオン式とは、デフ本体はボディ側にマウントし、デフケースの代わりに、左右輪を直接太いパイプでつなぐ方式だ。言い換えれば、デフケースからデフを取りだして、ボディにマウントし、ドライブシャフトを改めて繋ぎ直すという考え方だ。一見、リジッド方式からの大変更に見えるが、サスペンションの動き方を見れば、チャプマンによる三角アーム方式をほぼ完全に再現している。全く違う方式を使いつつ、オリジナルの設計を踏襲しようという知恵。むしろオリジナルの設計を踏襲するためにはどうしたらいいかという試行錯誤がそこからは感じられる。 他社はどうだったか? 例えばバーキンの場合、AE86用のリアサスペンションをそのまま使用した。リジッドという形式は踏襲されたが、アーム配置はいわゆる5リンク式で、オリジナルの設計と全く違う。設計とは最良の妥協点を見出すことだと先に述べたが、チャプマンの妥協点をご破算にする行為だと言える。