警察OBが「この小学校は最も不審者が侵入しにくい」と太鼓判を押した理由 全員が当事者になる「みんなの学校」の意義【石井光太×木村泰子】
“風呂敷”が画一的に
木村 「学校を地域社会に変える」ことですね。子どもたちと一緒に学ぼうと思う大人はみんな学校のピンポンを鳴らして入ってくればいい。 こういう話をすると、子どもの個人情報を心配する声や、不審者が入ったらどうするんですかという反発が聞こえてくるんですけど、それは逆なんですよね。いろんな大人がいつも学校にいれば、不審者は入ろうとしません。警察のOBの方が学校を見守りで回っておられる中で大空小学校のことを「不審者が一番入りにくい学校ですね」とおっしゃいます。「どうしてですか」って聞くと「いろんな大人が学校の中にたくさんいる、こんな学校に不審者は来ませんよ」と。学校が地域にお願いして「どうぞ学校にいらしてください」という関係性を作っていけばいいと思います。 逆に教員しかいない学校だと子どもを包んであげられる“風呂敷”が画一的になってしまう。それは風呂敷というよりは柔軟性のないスーツケースでしょう。これが不登校30万人の原因でもあると思います。教員が風呂敷を広げるだけでなくて、友達のお母さん、お父さん、地域のおじいちゃん、おばあちゃん、いろんな人が学校に来て色んな風呂敷を広げて子どもを包んでくれたらいい。そうすれば全員が当事者になり、「みんなの学校」になる。先生たちも、親も、地域の人も、ありのまま子供と一緒に学んでいく、ということが大事なのではないでしょうか。 前編『小学校で飛び交う「こいつとは無理」「キモい」の声…なぜ学校現場では“多様性”よりも「分断」と「格差」が助長されてしまうのか』では、教育の現場で進む子ども同士の「格差」問題について二人が語り合っている。
石井光太 1977年、東京都生まれ。海外の最深部に分け入り、その体験を元に『物乞う仏陀』を上梓。斬新な視点と精密な取材、そして読み応えのある筆致でたちまち人気ノンフィクション作家に。近年はノンフィクションだけでなく、小説、児童書、写真集、漫画原作、シナリオなども発表している。主な作品に『絶対貧困』『遺体』『43回の殺意』『「鬼畜」の家』『近親殺人』『こどもホスピスの奇跡』(いずれも新潮社)『本当の貧困の話をしよう』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(ともに文藝春秋)『教育虐待一子供を壊す「教育熱心」な親たち』(ハヤカワ新書)など。最新刊は『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)。 木村泰子 大阪市出身。武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。「みんながつくる みんなの学校」を合言葉に、子ども、保護者、地域住民、教職員一人ひとりがつくる大阪市立大空小学校の初代校長を9年間務めた。「すべての子どもの学習権を保障する学校」として、その取り組みを描いたドキュメンタリー映画「みんなの学校」が話題に。2015年春に退職、現在は全国各地での講演活動、教員研修、執筆などで多忙な日々を送る。著書に『お母さんを支える言葉』『10年後の子どもに必要な「見えない学力」の育て方』『「ふつうの子」なんて、どこにもいない』など多数。 デイリー新潮編集部
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