塩ラーメンでA級と言える美味しい店はどこだ?
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 山本益博のラーメン革命!
「塩」ラーメンが誕生したのはいつ頃なのだろうか? 私は1980年代初めに「東京・味のグランプリ」というガイドブックを上梓し、「すし、そば、てんぷら、うなぎ、とんかつ、ラーメン」という、いわば東京の郷土料理を取り上げ、飲食店を紹介したのだが、当時、ラーメン屋を訪れても、「塩味」を売り物にするラーメンはなかったと思う。それから10年ほど経って、改めて食べ歩きを再開したのだが、ラーメン界は「豚骨」ブームで、私の興味は次第に薄れ、いつしか視界から「ラーメン」が消えて行ってしまった。
90年代後半に青山「麵屋武蔵」、中延「多賀野」、吉祥寺「一二三」などは食べていたが、本格的にラーメンに目覚めたのは、ずっと後のことで、2010年代半ばになってからである。したがって、私のラーメン遍歴には、途中20年近くエアポケットがあって、その期間を経た後「塩ラーメン」に気が付いたのだった。おそらく、「塩ラーメン」は「湯麵」の延長線上に生まれたラーメンだったのではなかろうか? と言うのが、私の推測だった。 私が興味を失っている間にラーメンは、東京どころか日本の一大勢力の人気料理となり、B級グルメのトップランナーになっていた。私は、一度は視界から消えていた「ラーメン」を、改めて見直し、再び食べ歩きを始めた。 私が気合を入れて「ラーメン」と向かい合わせることになったのは新宿御苑の「不如帰」と三ノ輪の「トイボックス」でラーメンを食べてからである。どちらのスープにもノックダウンさせられた。「不如帰」の魚介の出汁、「トイボックス」の醬油味のスープに魅了され、さらに浅草橋「饗 くろ㐂」の「醤油」「塩」のラーメンを食べるに及んで、「ラーメン」がB級なのではなく、「ラーメン」にも、A級B級があることを教えられた。