「ホンダはEVでもNo.1を目指します」初の電動スポーツ車を25年に市場投入!ホンダの最新二輪EV戦略を電動領域担当者に聞いた
EV Fun Conceptのメカニズムについて
──クラッチと変速機は搭載されているのでしょうか? 実車を見ていただければわかるようにシフトペダルはなく、今回やろうとしているのはクラッチ無しの1ギアです。そもそもEVは効率いいのでギヤがいるのか?など色々意見はありますが、つけるとなると搭載スペース確保の問題があります。一方、ギヤがあったほうが航続距離が伸びるなどお客様のメリットにつながるのであれば可能性はあるかもしれません(田中さん)。 二輪メーカーであるホンダだからこそ、そういう様々な可能性を検討できるのが強みだと思います(浜松さん)。 ──EVというと航続距離が真っ先に話題に上がりますが…… 実際、お客様がまず一番に気にされるのは航続距離です。これは日本もヨーロッパも変わらない傾向で、やはり皆さんEVに慣れていない、触ったことがないから不安になる面があると思います。充電にも時間がかかるという点を含めて、トータルでどれくらい走れるんだろう、使い勝手はどうなんだろうと。ヨーロッパの人は通勤で1日50km走ったりするので、よりシビアかもしれません(浜松さん)。 エンジン車で航続距離がかなり短いバイクがあったとしても、ガソリンスタンドで5分もかからず給油できるわけで、それを繰り返していけば行動範囲は十分に広げられる。一方、EVについては、充電インフラとか、充電の待ち時間とかネガな印象があって、最初に気になるのが航続距離ということになるんじゃないかと思います(田中さん) ただ、私達もまだ完全に把握しきってないのが、実際にお客様がどこで充電をどこでするかというところで、例えば固定式バッテリーの車両はアパートなど集合住宅では充電しづらいですよね。ホンダには脱着式で持ち運べる「モバイルパワーパックe」というバッテリーがありますし、これはヨーロッパでも展開しています。一方で固定式バッテリーの車両も用意しつつ、お客様の使い勝手をしっかり考えたうえで準備していかなければと考えています。2つのソリューションを今出しているという感じです(浜松さん)。 EV Fun Conceptについては、現在ある環境……四輪のインフラを活用して使い勝手が高まるように、普通充電は「タイプ2」、急速充電は「CCS2」を採用しています(田中さん) ──バッテリーは専用に見えますが、市販化を考えるとコスト面で大変なのではないでしょうか? バッテリーはEV Fun Concept用に自社で専用開発し、使用される地域性やサイズ、容量、重量などを検討したものとなっています。単体機種として見るとコストとして大きいものになりますがバリエーション展開などももちろん想定していて、コアとなる部品は使いつつお客様のニーズに合わせてモデルを準備していくというのはエンジン車とも同じです。 車両価格のイメージはあるのですが、これくらいの排気量のバイクに相当する……という言い方はちょっと難しいですね。エンジン車の排気量帯という考えとEVは同じカテゴリーで考えづらいというか、そういう見方をした場合にはEVの方が遥かに高くなってしまう傾向はあります(田中さん) このEV Fun Conceptは2022年に発表した二輪EV戦略のなかで、2025年までに10モデル以上市場へ投入しますと言ったなかの1台なんです。その後、2030年までに30モデル以上と発表を行いましたが、EVでNo.1を取りに行くため、バリエーション含めラインアップ構築を考えています。そのビジネスプランに沿って、色々な開発も進めている段階です(浜松さん) ──冒頭で記したように、EV Fun Conceptは2025年に販売予定となっている(車名はもちろん変わるだろう)。バリエーション展開も考えられているとすると、近年のトレンドで言えばアドベンチャーモデルなどが登場するだろうか。いずれにしろ、そのデビューを楽しみに待ちたい。 レポート●上野茂岐 写真●上野茂岐/ホンダ