年金暮らしの親が「貯金がなくなり、暮らすだけで精一杯」と言っています。親の面倒をみたいのですが、妻は同居に反対しています……。何か解決策はありますか?
少子高齢化の中、高齢になった親の世話をどうするのか、悩む場面は多いものです。本稿では、子ども側からの視点で親との同居や距離感について、注意点とメリット、デメリットを考えてみましょう。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
子どもが親と同居を考えるきっかけは突然にやってくる
子どもが親と同居を考えるきっかけはさまざまでしょう。親の年金が少なく生活が厳しい、もしくは病気や認知症になった、父親が亡くなって母親1人だけでは心配など、わかっていたけれど先延ばしにしていた問題が急に現れるというケースも多いかもしれません。 仲のよい親子だとしても,赤裸々にお金の話をすることは少ないものです。親から「生活が厳しい」と聞かされていても、いつもの口癖か、それとも本当に切迫しているのか見極めるのにも時間がかかり、気が付けば、どうしようもなくなっている、というきっかけもあるかもしれません。 突然、どうしようもなくなる前に、親としっかりお金の話ができる関係を目指すために、まずは、「お金の話をすることが得になる」という説明から始めてもいいでしょう。親を税法上の扶養、もしくは社会保険上の扶養に入れるとメリットがあります。まずは同居を考える前に、この扶養を検討することから始めてもいいかもしれません。 兄弟姉妹が複数いるケースで、今年は兄、その次の年は妹というように、兄弟姉妹間で順番を決めて親を扶養にして、扶養のメリットを利用することは可能です。ただ、「生計を同一にして支援する」ことが扶養ですから、単に名目だけを扶養とすることではメリットは享受できません。
配偶者の「扶養」と親の「扶養」の定義の違い
社会保険の適用拡大を機に、配偶者の扶養については、詳しく知っている方も増えてきたように感じます。年間収入を、103万円か106万円、もしくは130万円という数字におさえるために、自分のパート収入計画を見直した方もいることでしょう。 ただ、配偶者と親族では、社会保険上の扶養の基準は少し異なります。 健康保険の場合、75歳以上は後期高齢者の保険に加入します。親が75歳になるまで健康保険上の扶養に入れることで、親が国民健康保険に加入して保険料を支払っていれば,その分の保険料を節約できるでしょう。 ちなみに、健康保険の扶養親族とするためには、同居していなくても可能ですが、「扶養の認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合」に限られます。 次に、税法上の扶養とするためには、「年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)」という基準があります。 この税法上の扶養の基準を満たせば、70歳未満の親ひとりあたり38万円、70歳以上の親ひとりあたり48万円(同居しているときには58万円)が子どもの所得から控除され、子どもの課税所得が少なくなり所得税が下がるというメリットがあります。 社会保険上、税法上いずれも単なる名目だけではなく、普段から生計を維持している、すなわち支援しているという証拠、例えば定期的に振り込みをする、など実態が伴っていることは基本です。