「書類の"ほう"をお送りする"形"で」…仕事ができない人と一発でバレてしまう"エセ敬語"を解説する
■「レシート、ご利用されますか」は誤用 「レシート、ご利用されますか」 レジ前で店の人からこう言われた私の脳内で、「はて」と一瞬ねじれ現象が起こりました。レシートを利用するのは店側か、客側か? 「ご利用されますか」は謙譲語+尊敬語なのか、それとも過剰な尊敬語なのか? そんな思いが忙しく駆け巡りました。 早い話が誤用です。「ご利用されます」の部分は一見すると敬語のように感じるかもしれませんが、間違いです。エセ尊敬語なのです。「ご……する」という謙譲語の型に「れる」を付けても、正しい尊敬語にはなりません。「筆記具をご持参されてください」「早めにご出発されてください」「無事ご卒業されました」なども同様に間違いです。 あまりにもよく耳にするため、正しいのかと錯覚しそうになるかもしれませんが、相手の行為に「お/ご……される」は使えません。 ■「~する」の尊敬語化は「~なさる」に言い換えればOK 「利用する」「持参する」「出発する」「卒業する」のような「……する」型の動詞(サ変動詞)を尊敬語にする場合、簡単なのは以下の方法。覚えておくと便利です。 ---------- ●「……する」→「……なさる」に変える 「レシートは(ご)利用なさいますか」 「筆記具を(ご)持参なさってください」 「早めに(ご)出発なさってください」 「無事(ご)卒業なさいました」 ---------- 「ご」は付けてもかまいませんが、「落選する」のように「落選なさる」とは言えても、「ご落選なさる」とは言えない場合もあります。そのため、まとめて「ご」なしで「……なさる」で覚えておくほうが無難です。 ■「書類のほうをお送りします」という不思議な表現 頼んだのは書類だけなのに「書類のほう」とは? 他にも何か送ってくるのかと思わせる「……のほう」。敬語ではないのに、敬語のように考えられている節があります。 ---------- 「会議室のほう、ご案内します」 「お荷物のほう、お持ちしましょうか」 「連絡のほう、取ってみます」 「課長のほうに申し伝えます」 「ミルクティのほう、お持ちしました」 ---------- ほうほう、最近は教育が行き届いて……と感心されることはまずない「……のほう」の大盛り。「お方(かた)」という語もあるように、かつて「方」の字は貴人を直接指すことを避ける意味で使われていました。しかし、だからといって、何でも盛ればよいというものでもありません。適切に使われてこそ、言葉は「効く」のです。