時間が気になって休めない…「時間不安障害」の現実と対処法
「時間不安障害」とは、時間が過ぎていくことに対する強迫観念とも、慢性的な時間不足に対する憂いとも言える。友達が待ち合わせの時間に遅れると、あとでTo-Doに充てる時間がなくなることが不安で仕方なくなったり、郵便局が予想以上に混んでいると、焦燥感から足踏みが始まって手のひらがベタベタになったりするのは時間不安障害の典型例だ。 【写真】24時間を有効に使うためには?実践したい7つのライフハック 「問題は時間に限りがあることではありません」と説明するのは、臨床心理士のケヴィン・チャプマン博士。「あなたと時間の関係をネガティブなものにするのは、時間を自分でコントロールできないという感覚です」。その感覚にとらわれた私たちは不安でいっぱいになり、自分が時間を無駄にしている(カフェの外で10分立っている)ことばかり考えて、しまいには普通のルーティンさえこなせなくなるという悪循環に陥るわけだ。 「人生に“意味”を強く求める人は、時間を無駄にするという考えに抵抗を示すことが多いです。それが自分の時間でも、他の人の時間でも」と話すのは、著書に『The Undefeated Mind』を持つアレックス・リッカーマン氏。「常に目的を持って行動し、すべてのことに何らかの価値を見い出してこそ幸せだとか成功だとか思っていると、ただ時間の経過を眺めていることが恐怖のあまりできなくなります」
多くの女性が時間の不安を感じる理由
子どもの頃は時間が無限にあって(夏休みにも終わりがなくて)、大人になると時間の経過が早くなるというのは単なる気のせい。でも、時間以外の物事は間違いなく変化する。 大人になるまでに私たちは喪失を経験し、赤ちゃんの急速な成長過程を目撃し、学校の時間割や学年の区切りにある長期休暇から解放される。そして、長く生きれば生きるほど時間の儚さと貴重さが身に染みて分かるようになる一方で、大人としての義務と目標は増えていく。だから私たちは、その1分1秒が日を追うごとに手放せなくなる。 作家のクラウディア・ハモンド氏は著書『The Art Of Rest』の中で、大人の時間が減った2大要因に「個人の仕事量を一気に増やした2008年の金融危機」と「仕事と私生活の境界線を曖昧にしたテクノロジー」を挙げている。 英サリー州出身の小学校教諭フェイ・ミッチェル(31歳)が不安になるのは、皮肉にもスケジュールに余裕があるとき。「時間を無駄にするのが怖すぎて、結局なにもせずに終わってしまう」と彼女は語る。 「体が固まってしまうような感じです。やらなければならないことも、その時間をどう使うべきかも分かっているのに、自分に対する期待値が高すぎてなにも手に付きません。濡れた髪にタオルを巻いたままベッドに座り、時間の経過を眺めているだけ。このままでは遅れてしまうと頭では分かっていても行動に移せないということが週に何度かあります」 チェンジマネジメントを専門とする心理学者で神経科学者のリンダ・ショー博士によると、1分1秒も無駄にしたくないという強い気持ちは、プレッシャーの大きい仕事をしている人や、1日12時間労働がざらにある個人事業主の人たちを苦しめる。これには私も共感せざるを得ない。 「スーパーママになりたかった」と語るロシェル・ロドニー=マソップ(26歳)は、ロンドンで接客業のパートをしながら双子を育てるシングルマザー。「心理学を専攻中の21歳で妊娠したときは、本気でインターンシップと子育てを両立できると信じていました。でも、卒業してアパレル・マーチャンダイジングの仕事を始めてからは、子育て、長時間の労働と通勤、家の改築を同時並行で行うことが不可能に思えてきました。どんなに時間を効率よく使っても、1日24時間じゃ足りなくて」 ショー博士によると、家族が増えても時間は増えないので、母親はとくに不安を感じやすい。「女性は普段から時間のプレッシャーを感じているだけでなく、周囲の人の精神的な負担を一手に引き受けるところがあります。子どもや親、パートナーや兄弟姉妹の不安を吸収するのは一般的に女性ですから」