昆虫館に外の生き物の持ち込みは禁止 多摩動物公園が注意喚起へ
人工飼育環境への生物持ち込みについて、作家・寮美千子さんが憤っている。きっかけは「多摩動物公園の昆虫生態園に、家のアゲハチョウを放した」という人のフェイスブックの書き込み。「外から勝手に虫を持ち込むのはダメ」とたしなめたが、逆に反発されたという。寮さんのツイートは、すでに6300件以上リツイートされており、同園では、昆虫を放たないよう貼り紙を貼って注意喚起することを決めた。なぜ、昆虫生態園に外部から昆虫を持ち込んではいけないのか?
チョウに限らず、外からの生き物持ち込みは禁止
寮さんは「家で成虫になったアゲハチョウが寒くてかわいそうなので多摩動物公園の昆虫生態園に放した」という内容のフェイスブックの投稿に対してツイート。 多くの人が「いいね」を押していたことから、寮さんは「人工の飼育環境に外から勝手に虫を持ち込むのはダメと理由を述べて注意したが、反発されるばかり」とツイッターした。 多摩動物公園によると、昆虫生態園では、建屋の中が温室のようになっており、1年を通してさまざまなチョウが観察できる。これらのチョウは、園内で卵から成虫に飼育した個体を放して管理している。 同園で広報を担当する教育普及課の吉田昌子さんは「温室の中の昆虫を含めた生き物は飼育係で管理していますので、チョウに限らず、外から生き物を持ち込むのは禁止しています。これは、他の動物舎も同じです」と説明する。 外部からチョウを持ち込んだ場合、「外からのチョウがいろいろな病気を持っていたり、ダニなどの寄生する生き物が付着していたりすると、ほかのチョウや昆虫が病気に感染したりするなどの悪影響がおよぶ可能性もあります」と生物への悪影響を危惧する。 病気や寄生生物に加えて、別の品種のオスとメスとがかけあわさって雑種ができる「交雑」の問題もある。「交雑してしまうことで、遺伝学上、中間的な種ができてしまうこともあります。そうならないように管理しているのですが、知らない生き物が外部から入ってきてしまうと、交雑が起こる可能性があります」と吉田さん。 吉田さんは「このような放し飼いの施設は性善説に立っているというか、お客様にモラルを守っていただくことを前提として公開しているのですが」と困惑しており、来園者のマナーに強く訴えている。 (取材・文:具志堅浩二)