『虎に翼』寅子モデル・三淵嘉子への子どもたちの辛口評価から見えてくる母への愛
継子たちとの微妙な空気に新たなる問題が勃発しているNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』。「夫婦のようなもの」という形式で、星航一(岡田将生)と入籍はせずに、娘・優未(毎田暖乃)を連れて同居を始めた佐田寅子(伊藤沙莉)。星家には、航一の父親の後妻である星百合(余貴美子)と、司法試験を目指す息子の朋一(井上祐貴)、寅子と同じ明律大学に入学したばかりの娘・のどか(尾碕真花)がいる。 【画像】号泣の声多し!『虎に翼』をふりかえる名場面 継母ということから完全アウェイな中、いつも通り明るくふるまう寅子と優未と明らかにテンションが違う星家の子どもたち……。8月26日には「母親面はやめてください」とまで言われてしまう。なかなか辛辣な展開だが、実は寅子のモデルとなった三淵嘉子さん自身、再婚後の子どもたち、さらには実の息子からも辛口の評価を受ける母親であったという。後編では、子どもたちの辛口コメントと晩年の子どもたちとの関わりについてお伝えする。(文中敬称略)
忙しい母に息子・芳武はさみしい思いを
幼くして父を亡くした芳武は、シングルマザーとなった嘉子とふたりきりで暮らしたこともあったが、仕事が忙しく家事育児に手が回らない嘉子に代わり、実際には嘉子の弟夫婦に世話をしてもらい育ててもらった。ドラマでも、兄の嫁の花江に娘・優未の日頃のケアを任せきっていて、それが親子間、花江たち家族とのひずみを生む姿も描かれた。 芳武が成城にある玉川学園の小学校に通っていた時のことだ。玉川学園は当時、日本でも数少ない自由を尊重する学校だったが、芳武はそこですらはみ出すような超自由人タイプだった。頭の回転が速く、非常に賢かったものの、枠にはまるのが大嫌い。学校の授業中にふらりと外に出て虫取りに行ってしまうこともあったというエピソードには、将来彼が生物学者として活躍する片鱗が見える。 そんな芳武が、小学生の頃の母・嘉子について語っている。 「そのころ僕たち親子は、母の弟である輝彦夫妻と一緒に住んでいました。昼間、裁判所に行っている母の代わりに、輝彦との妻の温子(はるこ)さんには、とても世話になりました。音痴で学校の音楽の授業でまともに歌えない僕のために、おばさんはオルガンを弾いて歌の練習をさせてくれました。 小学校2年生の頃、母がアメリカに少年法の実施状況の視察に行き、半年ほど留守にしたときは、おばさんがいてもやはり寂しかったです」 ドラマでも、仕事に追われる寅子を見てさみしそうな表情をする小学生の優未の姿が何度も描かれた。この部分は史実とドラマはかなり重なっている部分といえる。