監督交代から必要なプロセスの第一歩を踏んだ浦和。理想からかけ離れたリアルを受け入れ、あるべき場所へ昇っていくしかない
グスタフソンなのか、安居なのか、原口なのか
ただ、そうした個人の良さが出てきただけでは、継続性のある強い勝ち方は望めないだろう。渡邊も認めるように、結局はチームとしてまとまっていく必要があるからだ。 浦和のアカデミー出身で、欧州での挑戦期間を挟んで在籍10年目となる関根貴大は、選手ミーティングについて「それぞれ感じることは違うと思う。こういう状況でも。誰の言葉がどう響くのかは人それぞれだと思ってた。そのなかで、いろんな選手が発言してくれたことが良かった」と振り返る。 関根が仲間たちに発信したことは「ピッチ上にリーダーがいない現状がある」ということだった。「方向性が定まらないというか、ピッチの中で解決できないのが、今一番の問題だなっていう感じなので。そこは伝えました」。 つまり関根が言うところのリーダーとは、チームリーダーというよりも、スコルジャ監督の戦術的な意向を落とし込みながら、相手の出方を読んで、方向付けができるリーダーのこと。それは関根のようなアタッカーより、中盤から後ろの選手が担っていくべきだと彼は考えている。 サミュエル・グスタフソンなのか、安居海渡なのか、原口元気なのか。「ピッチ上にリーダーがいないと、僕が言うのはそこにつながるんですけど、ゲームをコントロールするところで、そういう選手は必要だなと。ピッチの中でああしたい、こうしたいとコミュニケーションを取ることが大事」と関根は語るが、基本的にはボールを持って出していく選手が、方向性を握る部分は大きい。 言い換えると、そこがしっかりしていないと、いくらアタッカーがゴールに矢印を向けていても、そこに線が引かれていかない。ポジション的に使われる側、活かされる側の関根ではあるが、だからこそピッチ上のリーダーを助けていくための働きかけが、周りの選手にも必要であることを認識している。 「そこは自分が今、足りてないなと感じる部分でもあるし、うまく使うじゃないけど、それぐらいポジションを取らせるシーンがあってもいいと思うんですよ。自分がここで受けたいから、ボランチがそこで受けてくれ、サイドバックがそこで受けてくれっていうのは、もっと要求してもいい」 この現状をどうにかしたいという選手たちの思いが、こうして表に出ただけでも大きな前進だが、浦和が本当にタイトルを争えるチームになるために、来年のクラブワールドカップで世界での躍進を目ざすにふさわしいチームになるために、監督交代から必要なプロセスの第一歩を踏んだにすぎない。 まずは目の前にあるJ1残留を確かなものにして、良いシーズンの締めくくりができるか。理想からかけ離れてしまったリアルを受け入れながら、あるべき場所へ着実に昇っていくしかない。 取材・文●河治良幸