妻を信じきれない40代エンジニアの「墓まで持っていく話」 #令和の親 #令和の子
子を持つ男親に、親になったことによる生活・自意識・人生観の変化を、匿名で赤裸々に独白してもらうルポルタージュ連載「ぼくたち、親になる」。聞き手は、離婚男性の匿名インタビュー集『ぼくたちの離婚』(角川新書)の著者であり、自身にも2歳の子供がいる稲田豊史氏。 【画像】妻子がいながら、30年前の元カノを引ずる男性 第11回は、ふたりの娘がいるIT系エンジニアの40代男性。家族関係的にも経済的にも不自由なく暮らしているが、妻にとある疑念を抱いている。
11/ぼくたち、親になる
エンジニアである村松遼平さん(仮名/48歳)の印象をひと言で表すなら、「ロジカルシンキングに長けた、理系で多趣味のコンテンツ好き」だ。 高校時代は美術部に所属しながら漫画研究会に出入りし、大学では映画やミステリー小説にどっぷり浸かった。ビデオゲーム、テーブルトークRPGを嗜み、草創期のインターネットに没頭して、IT企業に就職。現在ではそれらの趣味に、アメフト観戦や水泳も加わっている。 妻の真知子さん(仮名/47歳)とは大学時代にサークルで出会った。卒業後に交際をスタートさせ、村松さん30歳、真知子さん29歳で結婚。娘をふたり授かった。 数年前、村松さんは海外資本のIT企業に本社採用され、一家で某国に移住した。現在、長女と次女が現地の高校と中学にそれぞれ通っている。 転職によって、「収入は2倍になった」という村松さん。経済的に恵まれ、家族関係は良好、傍から見れば「これ以上なき成功者」に見える。 しかし村松さんは妻に対して、ある「疑念」を長らく抱き続けているという。 ※以下、村松さんの語り
「こうありたい」がない
昔から結婚に関して「こうありたい」というイメージを抱いたことが、一度もないんです。 だって、「あるべき家庭の姿」を思い描いて、誰かと結婚して、子供を作って、もしそれが実現できなかったらどうするんですか? 「理想像」なんていうハイリスク・ハイリターンの賭けにベットして(賭けて)外したら、悲惨極まりないでしょう。 だから、子供を作るにあたっても、ポジティブな期待も、ネガティブなイメージも、どちらも持ちませんでした。よく、子供ができると趣味に費やす時間が減るとか、仕事に没頭できなくなってキャリアに影響が出るとかいう人がいますよね。僕の場合、そこはまったく想像しなかったというか、リアリティがないまま作りました。 よく男性で、育児によって自分が成長したとか、何かの達成感を味わったというようなことを語る人がいるけど、僕はそういう尺度で考えたことがありません。育児に関する予想外の事態も、「目の前に解決すべき問題が降ってきた」というだけのこと。何かロマンチックに語るような代物じゃないでしょう、育児なんて。 子供を作った理由ですか? うーん、そんなこと言われても(笑)。なんとなく、としか言いようがないです。もともと「こうありたい」がないので、確固たるビジョンのもとに子作りをしたわけではないんです。