「産後4か月で日本代表に」階段競走の国内女王・立石ゆう子のモチベーションを変えた息子の「ひと言」
立石さん:元々は息子が生まれたら、国内戦を中心にして、海外戦は数年に1回くらいでいいかなと思っていました。でも、離婚するタイミングで両親が「面倒を見るから実家で一緒に暮らそう」と言ってくれて。競技についても「あなたの好きなようにやりなさい。海外に行きたいのなら諦めなくていい」とかなり理解があったんです。両親の言葉でガラリと考えが変わって「じゃあ挑戦してみようかな」って。 あと、保育園の協力もかなり大きいですね。仕事のときはもちろんですが、練習や遠征のときも快く引き受けてくださるし、大会で優勝したら「おめでとう」という張り紙まで用意してくれて。皆さんの支えがあるからこそ、ママさんアスリートとして競技を続けられているなと感じています。
■競技に向き合う姿勢が変わった“息子のひと言” ──息子さんはまだ幼いですが、お母さんが「アスリート」であることはもう理解しているのでしょうか? 立石さん:自分から思ったのか、周りに言われたのかはわかりませんが、初めてステアクライミングのことを「これかっか(お母さん)の仕事ね」って言ってくれたのは息子なんです。そう言われたときに、私の中で競技に対する姿勢がガラッと変わったんですよね。自分の中では競技を仕事だと思って取り組んでいても、周りからはまだそう捉えられないことが多い中で、息子のその言葉がすごくうれしかったんです。
レゴを高く積み上げて「かっかの仕事ね」と指さすこともありますね(笑)。私が練習に行こうとすると、たまに駄々をこねるのですが「お仕事で走らなきゃいけないんだよ」って言うと、「うん、行ってらっしゃい」って手を振ってくれるんです。まだ幼いので「仕事」という言葉をどこまで理解しているかはわかりませんが、彼の中で特別なものと思ってくれているのかもしれません。 ──息子さんが「仕事」だと応援してくれるのはうれしいですね…!
立石さん:ただ最近は寂しがることも増えています。私がスーツケースを出してくると「どっか行くんだろうな」って警戒して離れなかったり、スーツケースの中に入ろうとしたり…(笑)。いずれは息子を連れて海外レースを回りたいと思っているんです。 日本では海外遠征に子連れで行くアスリートはまだ少ないですよね。でも、東京オリンピックのドキュメンタリーのなかで、海外のママアスリートが「子どもを連れて行かないという選択肢はなかった」と話していたのがすごく印象的だったんです。正直、経済的にもパフォーマンスの面でも簡単なことではないのですが、誰かがやらないと「当たり前」にはならないと思っていて。