<水沼貴史氏が分析>なぜザックJは変わったか?
2点のビハインドを背負っていた日本代表に勇気を与え、後半の猛攻撃を導いた前半44分のFW大迫勇也(鹿島アントラーズ)のゴールを改めて振り返ってみると、オランダ戦における「キーワード」が浮かび上がってくる。 最終ラインの選手からパスを受けたMFストロートマンに対し、DF吉田麻也(サウサンプトン)が果敢に敵陣へ侵入して強烈なプレッシャーをかけた。こぼれたボールがFW岡崎慎司(マインツ)、吉田を経由してMF長谷部誠(ニュルンベルク)へと渡る。 ■オランダ戦 特筆しすべきは「スピード」 長谷部は素早く反転し、ドリブルから左サイドへ走り込んだ大迫へスルーパス。ここで大迫がトラップしていたら、おそらくゴールは生まれていなかっただろう。ダイレクトで右足を合わせ、ニアサイドを狙った大迫の一撃に、オランダの守護神シレッソンはわずかに反応が遅れてしまった。 この一連の動きの中で特筆したいのは「スピード」だ。 守備から攻撃へ切り替えるスイッチを入れた吉田の素早いプレッシャー。パスを受けてから迷うことなくショートカウンターを仕掛けた長谷部の判断力。そして、大迫のダイレクトプレー。これまでのザックジャパンではなかなか見られなかった「速く攻める」が、ほぼ完ぺきに実践されていた。 ■本田のゴールも「スピード」が生み出した 後半15分にMF本田圭佑(CSKAモスクワ)が決めた同点ゴールも、複数の選手のプレーに織り交ぜられた「スピード」から生まれている。DF長友佑都(インテル)からのスローインを受けたMF遠藤保仁(ガンバ大阪)が、右タッチライン際をオーバーラップしたDF内田篤人(シャルケ)へ約40mのサイドチェンジのパスを通す。 反転してパスを出すまでの遠藤の動きにまったく無駄な時間はなく、内田にしても長友がスローイングを入れ、遠藤がフリーになると分かった瞬間に、自陣から素早く動き出している。 内田がパスを受けてから、岡崎、本田、再び内田、大迫が絡んで7秒間の間に5本のショートパスをつなぐ。そのうち3本がダイレクトパス。大迫の落としに本田が左足をヒットさせた瞬間、周囲にいた3人のオランダ選手はほぼ棒立ち状態でシュートを見送るしかなかった。