<水沼貴史氏が分析>なぜザックJは変わったか?
■ザッケローニ監督の存在が導いた善戦 W杯で準優勝3度の実績を持つ強豪を翻弄した、一連の「スピード」は何に導き出されたのか。アルベルト・ザッケローニ監督の存在を抜きには語れないと、私は見ている。 FIFAランク8位のオランダ代表、同5位のベルギー代表と対戦する今回の遠征で、ザッケローニ監督は危機感を覚え、選手たちに対してあらゆる形でメッセージを伝えてきたのではないだろうか。 その最後にして最大のメッセージが、オランダ戦に臨んだ先発メンバーの顔触れとなるはずだ。 セルビア代表、ベラルーシ代表にともにノーゴールで連敗を喫した10月の遠征では不動だった11人から、GK川島永嗣(リエージュ)、遠藤、FW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の4人が外れた。 ■「鉄板」だったダブルボランチを変更 これまでのザッケローニ監督のやり方、考え方ではまずあり得ないことだ。特に遠藤と長谷部のダブルボランチは、岡田武史前監督時代の2008年5月に行われたコートジボワール代表戦を皮切りに、日本代表の心臓部として不動の地位を築いてきた。 2人の存在はいわゆる「鉄板」と思われているとすれば、故障やコンディション不良でもない遠藤がベンチスタートとなった事実は、周囲の選手に大きな影響を与えるだろう。 遠藤に代わるボランチには山口螢(セレッソ大阪)が指名され、フル出場した中で攻守に出色のプレーを見せた。ザッケローニ監督は選手たちに対してスタメン変更の意図を伝えていないはずだが、長谷部は試合後に「監督からのメッセージ」という言葉を残している。 ■代表チーム内での競争意識の芽生え 遠藤や所属チームでようやく出場機会が増え、試合勘を含めて復調の兆しを見せていた香川を介して、代表チーム内における本当の意味での競争意識が煽られたと見ていいのではないか。 長谷部が受け取った思いを、周囲の選手たちも共有できたとしたら。これまで主力として出場してきた選手たちはもちろん、途中出場やサブが多かった選手たちにも大きな刺激となる。