横浜流星と藤井道人が『正体』撮影現場で見せた絆の深さ
そしてその“共犯関係”は原作者の染井為人とも共有したとのことで、横浜と藤井監督を交えて食事をした際にも「僕は藤井さんの映画、そして横浜さんの映画をすごく観てきていますが、おそらく考えてること、感じてるものがすごく近いと思う。世代も近いので、楽しみです」と言われたことがあったという。
本作の主要な登場人物は、身寄りのない鏑木のことを気にかけてくれる編集者の沙耶香(吉岡里帆)、ブラックな労働環境の中で友情を育んでいく日雇い労働者の和也(森本慎太郎)、介護施設で働く同僚の鏑木にほのかなあこがれを抱く舞(山田杏奈)、そして警察組織の論理に葛藤を抱きながらも、それでも職務に忠実であろうと鏑木を執拗(しつよう)に追い続ける刑事の又貫(山田孝之)。彼らが語る鏑木像はそれぞれが異なったものであり、それゆえに捜査は混迷を極めていく……。 この日、報道陣に披露されたのは、鏑木が大阪に潜伏中、日雇い労働者の同僚として一緒に働いていた和也(森本)と面会室で対峙(たいじ)するシーン。そして同じく面会室で刑事の又貫と対峙(たいじ)するシーンだ。藤井組の撮影現場を見学して気付くのは、撮影現場の雰囲気が非常に静かだということ、そして若いスタッフが多いということ。特にこの日は役者同士の芝居をぶつけ合う緊迫感あふれるシーンだったということもあり、それがより強く感じられたのかもしれない。
そのことについて「いつもあんな感じですよ」という藤井監督。「みんな目的があって、役割があるから、あまりしゃべってる暇がないというか。現場をご覧になっていただいて気付いたと思うのですが、20代、30代がメインのチームなので、怒鳴り声がない。みんなが目的意識を持ってれば怒鳴ることもないし、みんなが淡々とやっているのが心地いいというか。むしろ僕が一番しゃべってるくらい。みんな早く帰りたいし、押すのは嫌ですからね」と笑ってみせた。