<日本一を目指して>仙台育英 チーム紹介/4止 前監督時代からの「伝統」 地域と感動ともに /宮城
◇自主的にボランティアや交流 仙台育英野球部が普段、練習する「真勝園グラウンド」の左翼フェンスには「地域の皆さまと感動を分かち合う」と記されている。東北勢初の甲子園優勝を目指す仙台育英にとって、グラウンドのある多賀城市から東北全体まで「地域」の応援が不可欠だと考え、地域に愛されるチームを目指している。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 この姿勢が表れた一例が、台風19号の被災地でのボランティア活動だった。台風が上陸した2019年10月12日は岩手県で開かれた秋季東北地区大会の期間中だったが、台風の影響で日程が順延。その間に宮城県内で甚大な被害が出た。 「誰が言い出したわけでもないが、自然とみんなでボランティアに行こうという雰囲気になった」。グラウンドマネジャー(GM)の菅野友雅(2年)は、台風が去った後に開いたミーティングについて語る。もちろん大会中は野球に専念。だが、同18日に優勝を飾ると、その3日後には浸水被害を受けた大崎市鹿島台を訪れ、泥のかき出しや災害ごみの運搬に汗を流した。 部員の活動に帯同した監督の須江航(36)は「野球ができることの尊さを理解してくれたと思う」と話す。この他にも、東日本大震災の義援金集めや献血、近隣の幼稚園での交流会といった野球以外の活動を、部員自らの提案で行っている。 部員の自主性を重んじるのは前監督、佐々木順一朗(60)時代からの「伝統」だ。さらに、須江が目指す「『日本一』から必然的に招かれるようなチーム」を実現するため、部員は練習時間以外も研さんを積んでいる。 昨秋に急成長した投手の向坂優太郎(2年)は、村田町から高校までの通学時間、プロサッカー選手の長谷部誠(36)の著書「心を整える」を読んでいるという。競技は異なるが、第一線で長く活躍する選手の「考え方を吸収したい」という思いからだ。 ◇ ◇ プレーの質や精神的な成長を求め、センバツで「日本一」を目指す仙台育英だが、その道のりは決して簡単ではない。「甲子園では『5―3で勝つ野球』を目指している」と、主将の田中祥都(しょうと)(2年)をはじめ、多くの選手が口をそろえる。「甲子園出場校を相手に無失点は現実的ではないが、3失点以内に抑える守備と5点以上を取る攻撃力があれば勝てる」(田中)。開幕までの2カ月間で総合力を高め、悲願の優勝旗を持ち帰る。【滝沢一誠】=敬称略、おわり